いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」案の恐ろしい内容!?

金曜日から日曜日にかけて、あちらこちらで6本の講演をさせていただいて、支援組織の若手組合員などさまざまな対象の方々に、国政の動向や政治の重要性についてお話しをする機会をいただきました。

 

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最近の講演の中で、特に力を入れてお話しをしているのが現政権が進めている労働者保護ルールの改悪について。単に批判するのではなく、それがいかに、私たちが本来めざすべき労働政策とかけ離れ、間違った方向性のものであるか、そしてその中身が、いかに穴だらけで、労働者のためにならないか、なるべく分かりやすくお話しする努力をしています。

皆さんもご存じの通り、今通常国会では、昨年二度、廃案になった「労働者派遣法改悪案」の再提出に続いて、「労働基準法等の一部を改正する法律案」も提出されてくる可能性が高くなっています。後者については、今、労働政策審議会で最終盤の議論が行われていて、労働側はその結論案の内容に猛反発していますが、そもそも政府は最初から法案提出ありきで議論をまとめようとしてますので、結局、強引にこのままの内容で押し切ってしまうのでしょう。そうなると、これは大変なことになってきます・・・。

というのも、その「法律案要綱」の内容が・・・恐ろしい代物なのです。そう、いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ばれている制度の導入を可能にする部分ですね。要綱案そのものはこちらでご覧になれますので、ぜひダウンロードしてお読みをいただければと思いますが、ここでその恐ろしい内容の一端をご紹介しておきます。 今回、政府はこの「ホワイトカラー・エグゼンプション」に、「高度プロフェッショナル労働制」という呼称を与えました。まあ、そういう呼称にして、大多数の一般労働者に「自分には関係ない話だ」と思わせるためなんでしょうね(苦笑)。

要綱案では、「六 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」として記載されています。 で、それがどういうものであるかについて、最初の部分にこう書いてあります:

労働基準法第四章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない

これ、大事なところです。つまり、今回の高度プロフェッショナル労働制の対象となる労働者は、労働時間規制の適用から除外されるので、残業代や深夜・休日割増も払われなくなるのですが、それだけでなく、休憩(労基法34条)や、休日(労基法35条)に関する規制からも除外されてしまうのです。 しかしそれでは「労働時間に際限がなくなって、健康を損なうどころか、過労死にまで至ってしまう」という批判をかわしたいからでしょうか、要綱では「健康管理措置」として、労働時間(健康管理時間)を把握することを使用者に求め、その上で、具体的措置として次の規定をおこうとしています:

(四)対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を…使用者が講ずること。

    1. 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、深夜業の回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
    2. 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
    3. 四週間を通じ四日以上かつ一年間を通じ百四日以上の休日を確保すること。

 

さて皆さん、これをご覧になってどう思われます? おっ、(イ)は勤務間インターバル(休息)規制(のような)ものだし、(ロ)は労働時間の上限規制だし、(ハ)は休日規制だから、かねてから労働側が主張していた項目が全部入っているので、まずまずの内容じゃないか!・・・と評価されるでしょうか?

いやいや、ほとんどの方は、すぐこの規定の恐ろしさにお気づきになったはず。

まず、(イ)にしても、(ロ)にしても、一体それが何時間で設定されるのか、法案審議の段階では分からないし、省令で定めるので、国会での議論すら要らないという代物であるわけです。例えば、(イ)の休息規制が、本当に実効性あるものになるのかどうか、それは、時間が8時間で設定されるのか、12時間で設定されるのかで、全然違った評価になるわけですね。

しかも、仮に(イ)が8時間なり9時間なりで設定された場合(注:なぜなら、今、国内の労使で勤務間インターバル規制を導入している場合、9時間とか8時間が中心なのです)、裏返せば、1日16時間とか15時間とか、休憩なしに勤務(労働)しても全く法的に問題ないということになってしまいます。

さらに!

これらは「いずれかの措置」を採ればいいことになっているわけで、もし事業者が(イ)を採用したとすると、(ロ)も(ハ)も縛りがなくなりますから、月あたりの労働時間制限もなければ、休日の制限すらかからなくなってしまいます。つまり、1日15時間とか16時間連続勤務して、それを極論すれば、最長で1年360日(注:今回の法案で、年次有給休暇を最低5日間は取得させる義務を使用者に課す予定ですが、それはこの労働制対象者にも適用されると説明されています)続けさせたとしても、これは全く合法だということになってしまうのです。

逆に、例えば(ハ)を選択して、4週間で4日間(つまり24日間連続勤務が合法的に可能)と、年間で計104日間の休日を与えさえすれば、1日あたりの労働時間の規制すらかからなくなる、つまり、24時間働かせても大丈夫だし、極論すれば、それを24日間続けさせても合法ということになってしまいます。

いや、これ、本当に凄くないですか? 恐ろしくないですか? 実はこれ、先週の民主党「厚生労働部門会議」で、この要綱案の内容について厚労省の担当から説明を受けた際、私が質問した部分なんです。そしたら担当から「そうです、そうなります」って認める答えが返ってきたので、一同、騒然としてしまったわけです。

皆さん、今回、このホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外)の対象になるのは、役員でも、監理・監督職でもない、一般の労働者です。いくら導入当初は業種限定、年収要件あり(1,075万円以上程度を想定)で、対象はごく限られるとは言え、対象が少ないからいいってもんじゃありません。しかも、対象は将来的に拡大可能だし、恐らく拡大されるであろうことは、労働者派遣法の歴史や、今回拡大されようとしている裁量労働制の経過から見ても容易に想像できます。

結局は、残業代や深夜・休日割増を払うことなしに、ひたすらに成果を出すために働かせることができる労働者を生み出したいという、一部のとんでもない経営者の願望に、今の政府が応えようとしているだけなのではないでしょうか。だって、「労働時間でなく、成果で労働者を評価する」なんてことは現行法の枠内でいくらでも可能ですし、すでに多くの企業がそうしています。かつ、今回の要綱案には、どこにも、対象労働者には成果で賃金を支払いなさいなどとは書いてありません。全くのまやかし、ごまかしなわけです。

ということで、少し長くなりましたが、多くの方々と問題を共有するために書かせていただきました。いずれにせよ、こんなとんでもないもの、何としても止めていかなくてはいけないと思います。今後、要綱がまとまれば、それに基づいて法案が策定され、3月中には法案提出になると思われますが、ぜひ皆さん、怒って下さい、そして、力を貸して下さい!

参議院厚生労働委員会で、長時間労働問題について質疑!

本日(11月11日)行われた参議院厚生労働委員会で、先週に引き続き、質問に立ちました。

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今日は一般質疑ということで、長時間労働問題と、労働者派遣法改悪案について質問しようと用意をしていましたが、質問時間が20分と限られていたので、長時間労働問題に絞って質問することにしました。主な質問内容は下記に記載の通りですが、塩崎厚生労働大臣の答弁で注目すべき主なポイントは以下の通りです:

1.改正成長戦略に記載された労働時間関連施策4点について、1点目の「働き過ぎ防止のための取り組み強化」を確実に実施するのが労働時間改革の大前提であることを確認

2.労働基準監督の強化による法違反の取締については、いったい労働基準法の何条違反を見るのか、それによる削減効果が期待できるのかどうかについて、塩崎大臣は満足に答弁できず

3.36協定の特別条項を結べば、青天井で、過労死水準以上の残業時間すら合法的に認められてしまう問題について、塩崎大臣は答弁を避けた

4.36協定の特別条項を廃止して、総実労働時間の上限規制を設けるべきという追及には、なんと、「企業の事業運営上支障があるから、残業時間の上限規制についての実現は難しい」などと答弁。労働者の命、健康、安心・安全を守るのが役割の厚生労働大臣として全く不適切であることを露呈。

以上です。文字では雰囲気が伝わらないかも知れませんが、いや、まったく酷い答弁です。毎度のことですが・・・。お時間あったら、ぜひ参議院インターネット審議中継で録画版をご覧下さい。

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それにしても、これだけ労働者の状況を知らない、知ろうともしない厚生労働大臣の下で、労働者派遣法や労働時間規制の見直し議論などされてはたまったものではありません。今後も、政府の間違った政策について徹底追及を続け、あるべき労働者保護ルールの強化策を訴えていきます。

 

【本日の質問要旨】

1.改訂成長戦略に記載された「労働時間関連施策」の優先順位について

(質問) 5月28日に安倍総理は、長時間労働抑制のための取組を行うのがまず大前提だと断言している。そしてそれを受けて、改定成長戦略が策定されて、いの一番に「働き過ぎ防止のための取組強化」という柱が出されている。つまり、この働き防止のための取組強化を実効性ある形で実施することが大前提で、それをやらかなったら先には進まないという決意だと理解でよいか?

2.長時間労働削減本部による法違反取締の徹底について

(質問) 長時間労働削減本部の取り組みとして、「長時間労働削減の徹底に向けた重点監督の実施」が掲げられ、「法違反を是正しない事業場には送検も視野にいれて対応」となっているが、「法違反」とは具体的に労働基準法の何条違反をチェックするのか? また、それが、どれだけの長時間労働削減、過重労働撲滅につながるとお考えか?

(質問)きちんと労働基準法の手続きを踏んでいる、つまり法令遵守をしている事業場に、時間外労働が多いからと言って労基署が削減の指導ができるのか?

3.36協定特別条項の抜本見直しの必要性について

(質問) 大臣は、36協定特別条項の実態をご存じか? 現行労働基準法の下では、36協定の特別条項を結べば、合法的に、過労死基準以上の長時間労働を届け出て、その範囲で長時間労働を行うことが可能である。この問題を解消せずして、実質的な長時間労働の削減なんてできっこないのではないのか?

(質問) 大臣、現状、週60時間以上働いている労働者がどれぐらいいるのか把握されているのか? 30歳代男性ではなんと18.2%という厚労省の調査結果がある。この週60時間超え労働というのは、月換算すると、時間外労働が約86時間になる。告示が示している基準は月45時間。なぜこんなことが放置されるのか?

(質問) まずは、最優先の課題として、この36協定のあり方を抜本的に見直し、欧州では当たり前になっている総実労働時間の上限規制を定めることが必要だと考えるが、大臣、それをまずやるということを政治の意志として示して欲しいがどうか?

(以上)

画期的! 国会に超党派「非正規雇用対策議連」が発足!

 

少し報告が遅れましたが、11月6日(木)、国会で画期的な出来事がありました! なんと、非正規雇用問題に対処することを目的に、自民党を含む超党派の国会議員が結集した議員連盟『非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を考える議員連盟(略称:非正規雇用対策議連)』が結成総会を開催したのです。はい、そして私も、結成呼びかけ人(仕掛け人?)の一人です!

 

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議連結成の話は、今年の夏からスタート。日本社会の中で、今や、雇用全体に占める非正規雇用の割合が40%、2,000万人近くまでに拡大し、そのことが、いわゆるワーキングプア層の増加、社会格差の拡大を進行させ、経済成長や税収にも悪影響を及ぼし、さらには日本社会の未来を担う貴重な人的資源の損失にもつながっているという強い問題意識を共有した有志議員が集まって、検討を始めたのです。

そして、今の非正規雇用のあり方を抜本的に見直し、将来に希望の持てる生活が確保できるような雇用へと改革していくことをめざし、超党派の議員連盟を立ち上げることを正式に決定し、この日の結成総会につながったというわけです。結成総会開催までに、ごく短期間での入会呼びかけだったにも関わらず、衆参43名もの国会議員が入会を申し出てくれました。また、結成総会にはメディアも取材に来て、記事を掲載してくれています:

非正規待遇改善で超党派議連発足(NHK Newsweb)
非正規雇用の待遇改善へ 超党派国会議連発足(EconomicNews)
非正規雇用議連が発足 超党派で待遇改善目指す(Yahoo!ニュース)
総会では、まず、設立趣意書、規約、議連役員体制を決定。議連会長には、尾辻秀久参議院議員(自民党、元厚生労働大臣)、顧問には長妻昭衆議院議員(民主党、元厚生労働大臣)、会長代行には鴨下一郎衆議院議員(自民党、元環境大臣、元厚生労働副大臣)、会長代理には山井和則衆議院議員(民主党、元厚生労働大臣政務官)と桝屋敬悟衆議院議員(公明党、元厚生労働副大臣)、幹事長には福島みずほ参議院議員(社民党、元内閣府特命担当大臣)が就任しました。また、私が、この議連の事務局長を務めさせていただくことになりました。議連役員は、こちらから確認いただけます:非正規雇用議連 役員体制(2014〜)衆院選反映版1412

 

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今後は、まずこの臨時国会中に、議連主催の院内集会を勤労感謝の日前後をメドに開催し、政府への要望書採択を検討していくことを決定しました。また、来年の通常国会以降は、非正規雇用の当事者や、有識者らを招いての勉強会の開催や、雇用の現場への視察などを企画し、超党派の国会議員が共に学び、議論する場を提供していくことも確認しました。

総会の中で、多くの議員たちが、「この超党派議連の結成が、今、非正規雇用労働者として日夜、がんばって働いている人たちを勇気づけることができればと思う。私たちは、課題解決に向けて真摯に議論し、対策を打っていく決意だ」と述べてくれたことが、私自身、とっても印象的でした。この画期的な議連の結成に関われたことを嬉しく思いますし、これからしっかりと活動を前に進めていくために、力を尽くしていきたいと思います。

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厚生労働委員会で労働者派遣法改悪案の欠陥点を追及!

10月30日(木)の参議院厚生労働委員会、50分の質問時間をいただいて、安倍政権、そして塩崎厚生労働大臣の労働行政に対する基本姿勢を質しました。今回は、いわゆる「一般質疑」というやつで、特定の法案についてのみの審議ではなく、広く厚生労働行政一般について政府の見解や対応方針、具体的な対応についての考え方などを問い質すことができるのです。

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今、安倍政権の労働行政について問い質すべきことは山のようにあります。しかし50分という限られた時間なので、私は事前の準備で、以下の四点に絞ることにしました:

  1. 安倍総理の「法の支配」「国際法の遵守」発言と、ILO条約(国際労働基準)の批准・遵守促進について
  2. 労働者派遣法改悪案の問題点について(注:ここでは敢えて改正案ではなく改悪案と呼びます)
  3. 長時間労働の撲滅に向けた具体的取り組みについて
  4. 外国人技能実習制度の問題点と今後の対応について

いずれも大事な課題で、しっかり準備をしていたのですが・・・大変残念ながら、なんと、3番目のテーマにすら辿りつくことができなかったのです。なぜなら、2番目の労働者派遣法改悪案に関する質疑で、政府側、とりわけ塩崎厚生労働大臣が度々、答弁に窮し、かつ、政府参考人(法案担当部の部長)と大臣の答弁が違うということが二度にわたって発生したために、質疑が進まなくなってしまったからなのです。全くお粗末な答弁対応でした。

そしてこのことは、今国会で最大の対決法案となっている「労働者派遣法改悪案」について、担当である塩崎厚生労働大臣がその問題の本質を全く理解されていないこと、そして、全くいい加減な制度設計しかされていないことを露呈したことになります。ぜひ、参議院のインターネット審議中継で録画版をご覧になり、そのドタバタ振りをご確認下さい。

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ここでは、以下、ごく簡単に主なやりとりについて報告しておきます。

①安倍総理の「法の支配」発言と国際労働基準の遵守について

 安倍総理が盛んに「法の支配」「国際法の遵守」を国内外で訴えていることを受けて、労働分野での「国際法の遵守」、つまりILO条約の批准と履行促進、とりわけ、日本がまだ批准をしていない2つの中核条約、すなわち第105号(強制労働廃止条約)と第111号(差別禁止条約)の早期批准を強く求めましたが、国内法制との調整が必要との答弁を繰り返すばかりで、ほとんど関心のない様子。結局、「法の支配」の訴えもご都合主義に過ぎないということがよく分かりました。

②労働者派遣法改悪案の問題点について

 まず、派遣法の今回の改正が、これまでの派遣労働の「一時的・臨時的」という原則を放棄するものではないかと質しましたが、塩崎大臣は「一時的、臨時的であるという位置づけは維持するが、派遣という働き方を望む労働者もいるわけで、そういう人たちがよりよい環境で働き続けられるようにするのが目的の一つだ」と答弁。つまり、派遣労働を永続的に続けることを可能にするのも目的と大臣自ら認めたことになります。

 続いて、正社員化が目的なら、希望する労働者が正社員になれるよう、義務づけをすべきではないかという問いに対して、今回ははじめてキャリアアップをめざした教育訓練の提供義務などを義務付けたことを評価して欲しいとの答弁。ではその派遣労働者のキャリアアップを確実に保障する条文がどこにあるのか質しましたが、ちゃんとした答弁をできず、何も保障がないことを露呈してしまいました。つまり、政府は盛んに今回の法案で「キャリアアップが図られる」と宣伝していますが、法案上は何の担保もされていないことを認めたわけです。

 さらに、その唯一、派遣元事業者に義務付けられる教育訓練機会の提供義務について、その義務は、派遣元事業者と派遣労働者との雇用契約期間中にのみ発生するのか、その場合、一体いつ、派遣元事業者は教育訓練を提供するのか、ごく基本的な制度設計について確認したのですが、ここで政府参考人と塩崎大臣との答弁が食い違い、審議がストップ。結局、何ら詳細な検討されていないことが判明しました。登録型派遣というのは、普段は登録だけしてあって、実際に派遣元と派遣先との派遣契約が発生しないと労働契約も発生しません。つまり、労働契約が有効な期間とうのはイコール派遣期間なのであって、その期間に派遣元が教育訓練を提供するなどということは考えられないのです。

 そしてきわめつけは、常用型派遣と無期雇用の違いについて質問したときでした。常用型派遣といっても、実は有期雇用の反復更新契約が多いという実態を、塩崎大臣はまったくご存じなかったのでしょうね。なんと、今回の法案で、事業者がみんな許可制になるので、今後、常用型派遣は全員無期雇用になるという全く事実誤認の答弁を行ったために、審議が15分にわたって中断。結局、すったもんだの挙げ句、私の質問の時間がなくなってしまったということです。

 

それにしても、前回の有期雇用特措法案の質疑のときと全く同様に、用意した質問の半分もできないままに終わってしまいました。この程度の認識で、労働者の将来を左右するほどの重要法案を提出していることに本当に愕然としてしまいます。あらためて、派遣法改悪案の欠陥をさらに追及し、断固、今臨時国会での廃案に向けて徹底的に戦っていかなければならないと決意を新たにしました。引き続き、ご支援を宜しくお願いします!

今日の参議院厚生労働委員会での質疑から

事前にお知らせしていた通り、本日(10月28日)午前、 参議院厚生労働委員会で、有期雇用特措法案に関する質疑に立ち、法案の問題点について政府を追及しました。

 

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この有期特措法の問題点については、すでに先週のブログ記事で簡単に解説した通りですが、下記に、本日の委員会の最後、採決の前に民主党会派を代表して行った反対討論の全文を転載しておきますので、ぜひご一読下さい。

そして今日の質疑ですが・・・

実は、荒れまくりました。私の質問に対する政府からの答弁がとんでもない内容で、それを追及すると塩崎厚労大臣がしどろもどろになり、質疑が何度も止まってしまったのです。もしインターネット中継で質疑の模様をご覧いただいていた方がいたら、何が何だか分からなかったかもしれませんね。

では、その質問は何だったかというと:

(石橋質問) 認定された第一種計画(高度専門職労働者)に基づいて、個々の労働者との労働契約書に有期雇用契約の完了日(つまり無期転換権の発生時期)が書き込まれるとすると、契約が短期の反復更新であっても、当然、その完了日までの更新期待が生じることになる。つまり、労働契約法19条の規定に鑑みれば、合理的な理由なく、完了日前に雇い止めをすることは許されないはずだが、そういう理解でよいか?

これ、今回の法案の肝になる部分で、私にしてみれば政府からの確認答弁をとっておくつもりで聞いた質問だった(つまり、答弁は「その通りです」のひと言で良かった)のです。ところが、政府の答弁は「その保障はない」というような内容だったので、紛糾した(=私が怒った)わけです。だってその答弁では、「労働者の利益のための法案です」と言いながら、法文上、労働者の保護や利益には何の保障もないことを、政府が答弁で自ら認めてしてしまったようなものなのですから。

 

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結局、この混乱は、再開後の午後の委員会の冒頭、塩崎厚労大臣が混乱を陳謝した上で、「期間前の合理的な理由のない雇い止めは認められないということを、厚労省として周知徹底していく」ことを確認答弁して、収拾しました。しかし、それで失ってしまった私の質問時間は返ってこないので、残念としか言いようがありません。他にも追及したい問題があったのに・・・。

残念ながら、この有期雇用特措法、労働者保護ルールの改悪を続ける与党の賛成多数で可決してしまいましたが、先週から今週にかけての質疑を通じて、下記の反対討論にもある通り、今回の法案は実に問題の多い法案であることを明らかにできたと思います。今日からいよいよ労働者派遣法改悪案の審議が衆議院で始まりましたが、私たちは引き続き、法案の問題点を徹底追及して闘っていく所存です。

 

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有期雇用特措法 反対討論(2014年10月28日)
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民主党・新緑風会 石橋 通宏

 

民主党・新緑風会の石橋通宏です。

私は、会派を代表し、議題となっております「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」に対し、反対の立場で討論を行います。

以下、反対の理由を具体的に申し述べます。

第一に、今回の法案に、そもそも立法事実が存在していないことです。

5年無期転換ルールを導入した改正労働契約法は、2013年4月に完全施行になったばかりで、実質的にはまだ誰も無期転換ルールの対象となっておらず、具体的、客観的な問題は発生しておりません。

しかるに本法案は、労働契約に関する基本的な民事ルールを定める労働契約法に、行政側が個別法をもって例外を設けるもの、つまり、本来、労働契約関係にある全ての労働者に等しく適用されるべき無期転換申込権を、対象となる二つのカテゴリーの労働者について権利制限してしまうものです。昨年の臨時国会で成立した「改正研究開発力強化法」に続いて、立法事実もないままにまたもや今回、例外を設けようとすることは、有期雇用契約の濫用を防ぎ、労働者の保護を強化することを目的とした改正労働契約法の趣旨を損なうものであり、認めることはできません。

第二に、今回、無期転換ルールの見直し議論に至った過程に、深刻な瑕疵があることです。

今回の見直しは、昨年、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)の議論で突然、飛び出してきたものですが、労働者の代表が1人も含まれていない会議体で、雇用のあり方の原則にも関わる重要案件について勝手に意志決定を行うことなど言語道断です。これは、雇用・労働政策に関する議論は、三者構成の労働政策審議会で行うという基本原則を踏みにじるものであって、断固、容認できません。

第三に、本法案は、本来、ごく限定的かつ厳格に定めるべき「専門的知識等を有する労働者」の具体的要件を、法律の条文で明確に定めることなく、省令等に委任をしており、将来的にその範囲が拡大され、制度が濫用される恐れがあることです。加えて、法案の趣旨から言えば、対象となる「高度専門労働者」の処遇は、同一労働に従事する一般労働者に比して均等以上のものが保障されるべきであり、かつ、中途の雇い止めは原則、禁止されるべきですが、そのことが法文上は一切、担保されておりません。これでは、制限される権利の内容と比して、適切な保障がなされているとは言えず、到底、認められる法案ではありません。

第四に、定年後の継続雇用労働者に対する例外措置については、それが同一事業主の下で異なる権利をもつ高齢有期雇用労働者を存在させ、かえって雇用継続や処遇などにおける差別的取り扱いなどの混乱を現場に生じさせてしまう恐れがあることです。

今、やらなければならないのは、改正高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえ、希望者全員の65歳までの継続雇用を確実に確保することであり、60歳定年以前から有期雇用であった高齢者への対応を含め、政府としてその対策を強化することであり、本法案はその観点からも賛同できるものではありません。

以上、四点に絞って、本法案に反対する理由を申し述べました。良識ある本委員会の委員の皆さま方が、立法府の意志として揃って反対していただくことを要請し、私の反対討論を終わります。ありがとうございました。

民主党厚生労働部門と連合との共同勉強会を開催!

今日の夕刻、参議院議員会館の会議室で、民主党の厚生労働部門と連合本部との共同勉強会を開催しました。この共同勉強会は、前期からスタートさせたもので、労働者や生活者に関わる主要課題について、認識の共有化を図るために開催しています。今期から、私が厚生労働部門の雇用担当主査になったため、民主党側の窓口として連合の皆さんと連携し、企画をさせていただきました。

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今日のテーマは、「労働時間の現状と今後実現すべき法制度改革について」。具体的には、まず労働時間問題の現状と、労働時間規制の問題点について認識を合わせた後、今後、具体的にどのような政策的対応を行っていくべきか、という点について連合の考え方をヒアリング。特に、労働時間の上限規制や勤務間インターバル規制の導入、そして休日規制のあり方などについて、連合の考えを聞かせていただきました。

 

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皆さんもご存じの通り、安倍政権は、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した新たな労働時間制度、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションを来年の通常国会で成立させるべく、労政審での議論を始めています。しかし、今まず優先すべきは、長時間労働に法的な歯止めをかけること。それなしにホワイトカラー・エグゼンプションを導入したら、労働時間が際限なく増加して、まさに過労死促進になりかねません。今日の勉強会では、欧州諸国の実状なども交えながら、本来あるべき労働時間規制について大変いい議論を行うことができました。 今後も定期的にこの連合との共同勉強会を開催し、民主党の労働政策に反映させていきたいと考えています。

参議院厚生労働委員会の参考人質疑で質問に!

今日の午前中、参議院厚生労働委員会が開催され、「有期雇用特措法案」に関する参考人質疑を行い、私も民主党会派を代表して質疑をさせていただきました。

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議題となった「有期雇用特措法案」、正式な名称は「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」と言います。皆さんご存じの通り、平成24年に民主党政権下で、「改正労働契約法」を成立させて、有期雇用契約のあり方について重要な規制を設けました。そのうち、第18条が規定したのが「無期転換ルール」。5年を超える有期雇用契約の反復更新で、労働者に無期転換申込権を与えるというルールです。

今回の特措法案は、その5年無期転換ルールに、例外規定を設けるもの。(1)5年超、10年未満の期間限定プロジェクトに雇用される一定年収以上の高度専門職労働者と、(2)定年後に再雇用制度の下で同じ事業主と継続して有期雇用契約を結ぶ高齢労働者という二つのカテゴリーの労働者について、無期転換権を制限するものです。概要はこちらで:「法案の概要(pdf版)

 

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この特措法も、いわゆる労働者保護ルールの改悪の一つです。もちろん、民主党として反対しています。そもそも、H24年改正労働契約法は、昨年4月1日に全面施行になったばかりなのです。しかも、適用対象になるは、法施行後に開始した有期雇用契約ですから、5年無期転換ルールの適用が本格的に始まるのは、4年から5年たってからになるわけです(ただし、例えば3年契約の場合は、2回目の更新ですでに5年を超える契約となるので、その時点で無期転換申込権が発生します)。つまり、まだ実際の無期転換が始まってもいない段階で、すでに例外規定を設けようというのが今回の特措法案なわけです。

さらに!

今回の法案は、そもそもの発端が、昨年秋の臨時国会で成立した「国家戦略特区法」なんです。特区法の附則第2条に、高度専門職労働者の有期雇用契約のあり方について検討し、通常国会への法案提出をめざすと規定されたことで、その後、労働政策審議会でたった6回、審議した結果で、この特措法案が準備をされてしまったんです。民事上の労働契約ルールを定めるとっても大切な労働契約法の規定に、全く関係のない国家戦略特区法で改定の方向性を定めて法案をつくってしまうなんて、労働法制に関する政労使の三者構成主義という観点からも、決して許してはいけない行為なのです。

ということで、今日の参考人質疑、労働側を代表して連合の新谷参考人、使用者側を代表して経団連の鈴木参考人がおいでになって、それぞれの立場で本法案に対する意見陳述を行って戴きました。その上で、与野党から質疑が行われ、私も民主党会派を代表して、法案に反対の立場で、主に経団連の鈴木参考人に質問をさせていただきました。

今日は10分という短い時間だったので、(1)そもそも立法事実がない点、(2)高度専門職と言えども本人の選択権を奪うべきではないこと、(3)高齢者の場合にはまず65歳までの継続雇用義務を徹底すべきであること、などを中心に質問させていただきました。

来週火曜日(10月28日)にまた参議院厚生労働委員会が開催され、引き続き本法案が審議されます。私も再び、対政府質疑で質問に立たせていただきます(午前10時半から30分間の予定です)ので、応援宜しくお願いします!

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「ILO議連」第3回勉強会を開催!

本日(10月22日)朝、私が事務局長を務めている「ILO活動推進議員連盟」の今年度第3回目の勉強会を開催しました。早朝8時からの会合だったにも関わらず、18名ものメンバー議員の皆さんにご出席いただきました。もちろん、いつものように、政労使のILO理事組織やILO協議会、ILO駐日事務所などからも多数の方々にご参加をいただきましたので、大変盛況な会合となりました。

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今日の勉強会では、来日中の、ILOジュネーブ本部「多国籍企業局」荒井由希子シニア・スペシャリストをお招きし、「ILOにおけるCSRの取り組みと、国際サプライチェーンの労働問題」というテーマでご講演をいただいた上で、全体で質疑を行いました。 講演は、まず、CSRの類型や定義、特に国際的に主流になっている労働CSRと日本のCSRとの違いの説明から始まり、ILO多国籍企業ガイドラインなどの国際的なCSRツールの紹介、それらを利用して、多国籍企業が発展途上国に進出する際の支援を行っているILOの取り組みなど、荒井さんご自身の西アフリカでの経験なども交えながら、具体的に説明をいただきました。

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質疑応答では、参加議員から「日本の雇用慣行を世界にどのように発信していけばいいか」「中国企業は労働者も資材も持ち込んで新興国に進出しているが、ILOとして何らかの対応を行っているのか」など、さまざまな質問が出され、活発な意見交換の場となりました。 実は、2016年ILO総会の一般討論のテーマが「グローバルサプライチェーン」に決まっていますので、今後、日本の政労使としても具体的な議論を深めて行く必要があります。当議連としても、今後引き続き、この問題を取り上げていこうと思っています。

ところで・・・ 実は、荒井さんと私は、ILO入局の(ほぼ)同期で、2001年にILOジュネーブ本部で開催された新入スタッフ研修で顔を合わせたのが初顔合わせでした。今日は、7年振りぐらいの再会でしたが、ILOで頑張っている様子を確認できて嬉しかったです。ILO議連の活動の一つとして、荒井さんのようにILOでがんばっている日本人を応援していくことも確認しています。今後も、いろいろな機会を通じて、応援していきたいと思います。

第8回民主党多文化共生議連総会を開催

10月7日(火曜日)の夕刻、民主党「外国人の受け入れと多文化共生社会のあり方を考える議員連盟」の今年度第8回総会を開催しました。

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今回は、現行の外国人労働者技能実習制度に代わる新たな外国人労働者受け入れ制度の叩き台試案について議連メンバーの皆さんに説明し、参加議員やNGOの皆さんからご意見を戴きながら論点の整理と深掘りを行いました。

議論の中ではいろいろな意見がでましたが、主なポイントは2点。1点目は、補完性の原則を徹底するための「市場テスト」の実施方法。そして2点目は、外国人労働者の権利保護と労働移動の制限についてです。 まず、市場テストの実施方法については、①やり方次第で、対象分野の労働条件を低位固定化させてしまう可能性に対する懸念、②市場テストを実施するより雇用市場に調整を委ねる方が外国人労働者に有利になる可能性、などの意見が出されました。 また、労働移動の制限については、①原則、国際的に確認されている基本権を保障すべきだが、一定の制約は必要、②より自由な移動を可能にすることで労働者にとって有利な制度にすべき、などの意見がありました。

実際、具体的な議論を進めていけばいくほど、整理すべき課題の多様さ、複雑さが浮き彫りになってきます。今後は、論点として整理した点について、当事者や有識者の皆さんからのご意見もいただきながら、さらに掘り下げた意見交換をしていきたいと思います。

民主党「多文化共生議連」第7回総会を開催

今日(7月25日)の午前中、参議院議員会館内で、民主党「外国人の受け入れと多文化共生のあり方を考える議員連盟」の第7回総会を開催しました。閉会中ということで、議員会員の参加は4名のみでしたが、代理参加や市民グループの皆さんたちが多数、参加してくれました。

 

今日の主な議題は、先般、7月7~8日に実施した、韓国の外国人労働者「雇用許可制度」の視察報告と、議連としての対案検討の方向性についての意見交換です。韓国視察報告では、私から、調査結果の主なポイントとして、(1)雇用許可制度の導入によって、旧研修制度に発生していた多くの問題が改善され、人権保護や人手不足の解消にも繋がっており、評価されているが、その一方で、制度導入から10年が経過し、新たな課題に直面していて、政府はすでに見直し作業に着手していること、(2)労働組合やNGOは、10年前の旧研修制度の廃止から雇用許可制度の導入に積極的な役割を果たしてきているが、当初から「労働許可制度」の導入を主張していて、現在の見直し論議の中でも改めてその主張を展開していること、(3)雇用許可制度の下で、滞在可能期間が度々延長されてきたが、結局、期限が来た段階での不法滞在化のリスクは解消されておらず、今後の見直し議論の中で、一定の基準・条件の下に現状以上に定住化の道を開くか否かが重要な論点の一つになること、などを報告しました。

また、雇用許可制度の5つの原則 —- 補充制の原則、透明性の原則、需要尊重原則、短期循環の原則、差別禁止の原則 —- それぞれについて、趣旨と目的、具体的制度と施策、政策効果と現状の課題についてとりまとめたものを併せて報告させて頂きました。

意見交換の中では、「労働組合などが労働許可制度を提唱しているとのことだが、具体的な制度設計はすでに描いているのか?」「日本に制度を導入した場合、定住化や不法就労問題をどのように考えるべきか?」「韓国では労働組合が積極的な役割を果たしたとのことだが、日本で単純労働者の受け入れ是非を検討するにあたって、連合との議論の摺り合わせが必要ではないか?」「完全な制度は難しいため、韓国の制度以外にも、シンガポール、台湾、ドイツなどの外国人労働者の受入制度も勉強していくべきではないか?」等々、質問や意見が出されて、活発なやり取りが交わされました。今後、視察で得られた成果をベースに、更なる具体的検討を行っていきます。

議連として今後具体的な受け入れ策の対案を作成し、民主党内で論議をして行きたいと思います。