どうしても「残業代ゼロ」を実現したいらしいが・・・

いや、まあしつこいというか、執念深いというか・・・。

昨年、政府の産業競争力会議が雇用規制緩和の議論を始めたときに、「裁量労働制の適用拡大」がメニューに載せられていました。「第1次安倍政権の時に、ホワイトカラーエグゼンプションの導入に失敗したから、今回はさすがに懲りて、裁量労働制の拡大という戦術に転換したのだろうか?」と思っていたのです。しかも、去年はその後、解雇規制の緩和や国家戦略特区の議論に忙しくて、裁量労働制拡大の話も具体化して来なかったので、少し安心していたのですが・・・。

しかし・・・やっぱり諦めていなかった!!!

今年4月、再び、「労働時間改革」が産業競争力会議の議論の俎上に上ってきたのです。しかも今回は、ホワイトカラーエグゼンプションのスペシャル版。なんと、一定の条件下(労使合意と本人希望・同意)で、一般社員までもが対象になり得るような案だったのです。これじゃ「過労死促進法案だっ!」と批判すると、5月末の会合では一部修正した案が示されたのですが、これがまた酷い内容・・・。呆れてモノが言えないとはこのことですが、来年の通常国会に法案提出予定なんて言っているので、今から声を上げて、断固、阻止していかなくてはいけません。

現行の労働時間規制

まず、ごく簡単に、現行の労働時間規制のおさらいをしておきましょう。

労働基準法では、1日8時間、週40時間という法定労働時間を定めています。しかし、労使の合意があれば、一定の条件下で、法定労働時間以上の残業や休日出勤を行うことができます。そして、法定労働時間以上の時間外労働部分については、割増賃金が支払われなければなりません。

言ってみれば、労使合意をして、残業代さえ支払えば、いくらでも残業をさせることが出来るというのが現行制度なのです(=実は、これが労働時間問題の本質なのです)。

ところで、この労働時間規制、会社の役員は対象外ですし、部長や課長など、管理監督者についても適用除外になっているのはご承知の通り。さらに、「みなし労働時間制」というのがあって、その中で「専門業務型」と「企画業務型」の二つの『裁量労働制』が規定されています。一定の条件下ではありますが、その対象になれば、管理監督者以外の社員でも労働時間規制の適用外(実際の残業時間ではなく、みなしの残業時間で賃金計算)になります。ただし、これはあくまで労働時間規制の枠内で、労使の合意によって一定時間を残業したとみなすもの。労使の合意や労基署への届出が必要ですし、法定時間以上の残業時間相当分や、深夜や休日の労働時間については割増賃金の対象になるというのがポイントです。

産業競争力会議で示された案

5月末の産業競争力会議で示された修正案、提案したのは産業競争力会議の「雇用・人材分科会」で主査を務める長谷川閑史氏(武田薬品工業社長、経済同友会代表幹事)ですが、実際にこの案を作ったのは経済産業省の官僚という話も聞こえています。産業界の意向を最大限に反映した制度にするために頑張ってるのでしょうかね(苦笑)

「一般社員まで残業代ゼロにするのか!?」と批判された4月の案を一部修正して、「全ての労働者が対象ではなく、限定された労働者に導入する」ことを強調していますが、まさに突っ込みどころ満載です。まあ、本来、自分の裁量で成果や労働時間など決められない一般労働者に、労働時間規制の適用を除外にして「完全成果主義」を導入し、残業代なしで(成果を達成するまで)いくらでも働かせられるようにしようというのですから、まっとうな議論は成り立たないことは当然ですが・・・(大苦笑)

以下、いくつかポイントを示しておきます。

(1)対象が曖昧!

 まず、制度案は「限定導入」であることを強調していますが、実際は、具体的に誰が対象になるのかは明確にされていません。「職務経験が浅い、定型・補助・現業的業務など自己裁量が低い業務に従事する社員は対象外」とする一方で、「(a)中核的、専門的部門等の業務、(b)一定の専門能力・実績がある人材、(c)将来の幹部候補生や中核人材等が対象」としていて、結局は、経営側が後者に該当すると判断されれば幅広く対象となる危険性があります。

 ちなみに、(c)の将来の幹部候補生や中核人材等なんていうのは、企業によっては相当数の若手一般社員も対象になり得るのではないでしょうかね? だって社長さんたち、新入社員に「将来はうちの会社を背負って立つ人間になってくれ」って言うでしょ?(苦笑)

(2)本人の希望・選択なんてまやかし!

 制度の適用は「労働者本人の希望・選択」に基づくことになっています。これ、もっともらしく聞こえますが、当然、経営側は、半ば強制的に同意を求めてくるでしょう。さらには、選択の有無で、その後の昇進、昇格、昇給に差を付けてくることが容易に想定されます。

 だって、そもそも、対象となるのは「能力のある人材」とか「幹部候補」とかなんですよね? であれば、むしろ処遇に差が付くのが当然とも考えられます。そうなると、それを拒否できる若手社員がどれだけいるでしょうか? 断るというこは、「自分は無能で、一生ヒラでいい」と宣言するようなものじゃないですか? 実際、いったん断ったらその後ずっと干された、なんてことが起こっちゃうんだと思います。

(3)ブラックユニオンを奨励!?

 制度案によれば、導入は原則、過半数組合をもつ企業に限定するとしています。何だかとってもうさん臭い部分です(苦笑) これも一見、いいように見えますが、もし本当にそういう制度になった場合、どういうことが起こるでしょうか? 例えば、どうしても導入したい経営者が、いわゆる御用組合を結成して、強制的に労使合意をさせてしまうことも考えられます。先日ある会合で、連合の方が「ブラックユニオン奨励法案だ」と非難されていましたが、その危険性もあるのではないでしょうか。あっ、これ、昔で言う「イエローユニオン」ですかね。

 また、結局は、過半数の従業員代表との合意でもOKになってしまうのではないかと思いますが、そうなれば全く実効性ある歯止めにならないことは、残念ながら現行法の枠内でも証明されてしまっていますね。

(4)効率的に短時間で働いて報酬確保!なんて経営者がやる気になれば今でも可能!

 恐らく何が何でも「労働者にとって素晴らしい案だ」ということを示したいのでしょうが、制度案は、導入すれば「職務・成果に応じた適正な報酬確保」とか、「効率的に短時間で働いて、報酬を確保できる」とか、そのメリットを一生懸命に強調しています。

 しかし、 ここには大きな矛盾があります。大体、明確な成果とその対価、そしてそれに通常必要な労働量をどう適正に計量するのでしょうか? それが可能な一般労働者なんて、一体、どれだけいるのでしょうか? さらに言えば、それが可能だとすれば、それをなぜ、現行制度の枠内(裁量労働制やフレックスタイム制)でやろうとしないのでしょうか?

 大体、効率的に短時間で働くなんていうことは、経営者がその気になれば、現行の労働時間規制の枠内でいくらでも労使間で決めて実行出来る話です。先ほど確認したように、労働基準法というのは労働時間の上限に一定の歯止めをかけ、割増賃金の支払などを定めていますが、下限を定めているわけではないのです。規制の枠内で、労使が協議して所定内労働時間を定め、処遇を定めるわけですから、所定内労働時間以内で成果を達成したら、その分、残りの勤務時間は遊んでいていい、なんてことはやろうと思えばすぐできます。そうしないところが、まさに虚構なわけです。

(5)長時間・過重労働の防止・・・それが一番重要だ!!

 極めつけは、制度案が「健康確保のため、『労働時間上限』『年休取得下限』などの量的制限の導入」を謳っている点です。「なんだ、分かっているじゃないか!」と感心しちゃいけません。だって、謳っているだけで、何ら具体的な提案はしていませんし、一番最後にいかにもとってつけたように書かれているんです。本当はこれが一番、今、やらなきゃいけないことなのに!!!

 繰り返しますが、現行法の下では、労使合意さえ結べば、労働時間はほぼ青天井です。ちゃんとした労働組合がない職場では、過半数労働者の合意なんてほとんど形骸化してますから、中には経営者が勝手にとんでもない残業時間を労基署に登録している職場もあるんじゃないかと思います。だから、過重労働がなくならないし、過労死や精神疾患が蔓延しているし、仕事と家庭との両立が難しいし、女性が働き続けるのが難しいんです。

 つまり、今必要なのは、まず、年間総実労働時間に法的な上限を設けること。それ以上は、残業も休日も含めて決して働かせてはいけないということを決めることです。その上で、一日の勤務の終わりと次の日の勤務開始との間に、一定時間以上の休息時間を設ける「勤務間インターバル規制」を導入すること。さらに、絶対週休日を確保すること。現状は、変形休日制の下で月に4日、休日を与えればいいことになっていますが、それを7日に1日は絶対に休日を設けることをルールとして決めるんです。

 労働時間規制というのは、働く者の命と、健康と、生活を守るためにあるべきものなんです。そしてそれは、本来、経営者だって管理監督者だって同じであるはず。全ての働く者のために、これ以上働いちゃいけないっていう規制は設けるべきなんです。

 そういう最低限のことをちゃんとやった上で、その枠内で、労働者の働き方や希望に応じた裁量的な働き方が検討されるのはやぶさかではありませんが、今、政府がやろうとしていることは、順番が違うというか、全く真逆の案。つまり、労働者のためにやろうとしているのではなく、企業の都合のためにやろうとしていることが見え見えなのです。

今後の展開

以上のポイントをまとめると、(1)今、やるべきは、労働時間規制を強化することで、それをやらないままに労働時間規制の適用除外を一般労働者に拡大したら大変なことになる、(2)限定導入などと言って、はなから全然限定になりそうもないし、一旦導入されれば、将来的に対象が拡大されるのは目に見えている、(3)結局は、残業代(そして労働コスト)を抑制したい(一部の?)企業経営者のために労働者を犠牲にしようとしているに過ぎない、ということになるでしょうか。

今後、6月にも公表される予定の成長戦略第二弾に、この「労働時間改革」なるものが書き込まれる予定とのこと。その方向性に基づいて、労働政策審議会で具体的な制度設定議論が行われ、来年の通常国会にも労働基準法改正案が提出される運びとなるのでしょう。最終的に国会での勝負になれば、与党がまた数の力で強引に成立を図ることも予想されます。まずは何と言っても、6月から年末までが最初の勝負になるでしょうから、ぜひ連携して取り組んでいきましょう。

それにしても、解雇規制の緩和、労働時間規制の緩和、派遣労働の緩和、有期雇用規制の緩和、外国人単純労働者の受け入れ規制の緩和などなど、次から次へとよくもまあ出してくるものです。これらが全部実現した時、一体、どんな労働環境になっているのでしょうか? その悪影響を最も強く受けるのは、これから社会に出る若者や女性など、弱い立場の労働者です。働く者の安心を守るためにも、断固、闘っていかないといけませんね!

民主党「多文化共生議連総会」で韓国の「外国人雇用許可制度」を学習

5月26日午後、私が事務局長を務めている民主党「外国人の受け入れと多文化共生社会のあり方を考える議員連盟(多文化共生議連)」の総会を開催しました。

今回の議題は、主に二つ。まず、諸外国がどのように外国人労働者を受け入れているのか、その受け入れ状況や制度、処遇のあり方や生活支援について、国立国会図書館に調査を依頼していたのですが、その中間的な結果が出来上がってきたので、担当者より説明を受けました。

続いて、中央大学兼任講師の宣元鍚(ソンウォンソク)氏より、韓国の非熟練外国人労働者受け入れ政策(労働許可制度)について解説いただきました。韓国では、日本が実施している技能実習制度に習い、外国人研修生の受け入れを実施していたものの、(1)非正規滞在者の増加、(2)不適切事例の多発(人権問題等)、(3)政策機能の低下等の問題が生じたため、早々と「雇用許可制度」という新たな制度を導入して、外国人単純労働者の受け入れを公式に実施することになったとのことです。

受け入れにあたっては、国内労働市場の補完性を担保するため(つまり、韓国人労働者の雇用を奪うことのないよう)に、「労働市場テスト」(企業が求人募集して、1週間以内に国内労働者から求職があるかどうかを確認してから外国人労働者受け入れの許可を決定)、「総量規制」(政府が毎年の外国人労働者受け入れ総数の上限を設定)、「雇用率」(産業別・企業規模により外国人労働者比率に制限を設定)等を決めています。また、労働者の権利を保護するために、差別禁止や労働法の適用を徹底し、定住化を防ぐために滞在期間を最長4年10ヶ月とする等の基本原則を適用して受け入れを行っているようです。

さらに、運用体制については、出入管理法で在留資格に「非専門就業」を設定。また、外国人労働者の就業・雇用管理をするための「外国人勤労者の雇用等に関する法律」を制定し、政府が主体的に需給調整する等、政府主導で需給スステムを確立するとともに、送り出し側の国の責任も明確にするように、送り出し国とMOUを締結して運用を行っているとのことでした。

当議連としては、引き続き、現行の外国人技能実習制度の問題点を洗い出しながら、韓国をはじめとする諸外国の制度事例を調査し、将来的な制度のあり方を検討していきます。

民主党「多文化共生議連総会」で韓国の「外国人雇用許可制度」を学習

 

5月26日午後、私が事務局長を務めている民主党「外国人の受け入れと多文化共生社会のあり方を考える議員連盟(多文化共生議連)」の総会を開催しました。

 

今回の議題は、主に二つ。まず、諸外国がどのように外国人労働者を受け入れているのか、その受け入れ状況や制度、処遇のあり方や生活支援について、国立国会図書館に調査を依頼していたのですが、その中間的な結果が出来上がってきたので、担当者より説明を受けました。

 

続いて、中央大学兼任講師の宣元鍚(ソンウォンソク)氏より、韓国の非熟練外国人労働者受け入れ政策(労働許可制度)について解説いただきました。韓国では、日本が実施している技能実習制度に習い、外国人研修生の受け入れを実施していたものの、(1)非正規滞在者の増加、(2)不適切事例の多発(人権問題等)、(3)政策機能の低下等の問題が生じたため、早々と「雇用許可制度」という新たな制度を導入して、外国人単純労働者の受け入れを公式に実施することになったとのことです。

 

受け入れにあたっては、国内労働市場の補完性を担保するため(つまり、韓国人労働者の雇用を奪うことのないよう)に、「労働市場テスト」(企業が求人募集して、1週間以内に国内労働者から求職があるかどうかを確認してから外国人労働者受け入れの許可を決定)、「総量規制」(政府が毎年の外国人労働者受け入れ総数の上限を設定)、「雇用率」(産業別・企業規模により外国人労働者比率に制限を設定)等を決めています。また、労働者の権利を保護するために、差別禁止や労働法の適用を徹底し、定住化を防ぐために滞在期間を最長4年10ヶ月とする等の基本原則を適用して受け入れを行っているようです。

 

さらに、運用体制については、出入管理法で在留資格に「非専門就業」を設定。また、外国人労働者の就業・雇用管理をするための「外国人勤労者の雇用等に関する法律」を制定し、政府が主体的に需給調整する等、政府主導で需給スステムを確立するとともに、送り出し側の国の責任も明確にするように、送り出し国とMOUを締結して運用を行っているとのことでした。

 

当議連としては、引き続き、現行の外国人技能実習制度の問題点を洗い出しながら、韓国をはじめとする諸外国の制度事例を調査し、将来的な制度のあり方を検討していきます。

 

 

明日、文教科学委員会で質問にたちます!(事務所だより)

石橋議員が明日の参議院文教科学委員会で質問にたつことが決まりましたのでお知らせいたします。

 

日時:5月27日(火)
10:00~17:00 文教科学委員会(休憩 12:15~13:00)
13:00~14:00 石橋議員の質問 持ち時間60分
内容:教育委員会制度改正案について

 

委員会での質疑の模様は参議院インターネット審議中継で御覧になれます。↓

明日も応援よろしくお願いします!

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

(※これまでの委員会質疑も、こちらで見ることができます。)

明日、文教科学委員会で質問にたちます!(事務所だより)

石橋議員が明日の参議院文教科学委員会で質問にたつことが決まりましたのでお知らせいたします。

日時:5月27日(火)
10:00〜17:00 文教科学委員会(休憩 12:15〜13:00)
13:00〜14:00 石橋議員の質問 持ち時間60分

内容:教育委員会制度改正案について

委員会での質疑の模様は参議院インターネット審議中継で御覧になれます。↓

明日も応援よろしくお願いします!

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

(※これまでの委員会質疑も、こちらで見ることができます。)

「電子書籍と出版文化の振興に関する議員連盟」第3回総会開催~基本方針固める

いや~面白いです。そして、改めて技術の進歩を感じさせていただきました。実物投影機(電子書画カメラ)も、今やフルHDの画質になっていて、小さな虫を大画面に映し出しても、触覚の毛といった細かい部分まで実にハッキリと映しだしてくれます。また、電子黒板も、90インチの大画面に最新の機能が盛り込まれているにもかかわらず、シンプルな操作で使うことができるようになっています。
これなら、現場の先生たちもすぐに覚えて使うことができるでしょうね。電子顕微鏡で観察したミジンコの映像をパソコン経由で電子黒板に映し出してもらったのですが、ほんの1ミリほどのミジンコの内臓が動く様子まで細かに観ることが出来ました。凄~い!

 

うん、私の子ども時代にこんなICT教育があれば、もっと興味を持って勉強して、成績も伸びてたにちがいないでしょうね(ホントかな?)。値段にしても、この最新鋭の90インチ電子黒板で、約50万円とのこと。これ、少し前ならきっと100万円以上していたはず。価格も随分とこなれてきています。ただ、それでもまだまだ高価であることには違いありません。タブレット端末も約7万円。廉価版ならもっと安いのもあるのでしょうが、その辺は性能とのバランスですね。今後、全国の学校やクラスにこのような情報通信端末を普及させるためには、やはり、端末の価格をいかに低廉化させていくかが課題になるでしょうね。

参議院本会議での代表質問(地教行法改正案)

事前にお知らせしていた通り、5月23日(金)に開催された参議院本会議で、民主党を代表し、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」に対する代表質問を行いました! 応援していただいた皆さん、ありがとうございました!

 

代表質問の全文を、下記に掲載しておきます。ぜひご一読を。実際に質問している様子を、参議院インターネット審議中継のページ(本会議、5月23日を選んで下さい)でご覧いただけますので、お時間ある方はぜひ動画でご覧下さい。気合いが入りまくっている様子がよく分かると思います(笑)

本会議に先だって行われた民主党・新緑風会議員総会でも、全議員の前で登壇の決意表明。「教育行政への国の関与を強めようとしている安倍政権に対し、地方教育行政のあるべき姿を追及するためにしっかり質問する!」と熱く決意を述べました。

今回は、約2年半振りの本会議登壇でしたが、重要広範議案に対する代表質問は始めてだったので、相当気合いを入れて準備もし、登壇してきました。まずまず、満足いく仕事が出来たと思います。本会議後に、多くの同僚議員の皆さんから「良かった!」と声を掛けていただいたのが嬉しかったですね!

 

 

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地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対する代表質問
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 民主党・新緑風会の石橋通宏です。

ただ今、議題となりました、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」につきまして、会派を代表して質問いたします。

1.  戦前の教育制度への反省と、日本国憲法が国民に保障する教育権の内容について(安倍総理)

冒頭、安倍総理に、戦前の教育制度への反省と、戦後、日本国憲法が国民に保障してきた教育権の内容についてお聞きします。

第二次世界大戦以前の我が国の「国家教育法制」は、国が国民を統制するための手段として、中央集権的な教育課程行政を実行し、その教育を受けることが国民の義務とされたため、結果、戦争の惨禍に国民全体を引きずり込む一つの大きな要因となりました。

その大いなる反省を基に、戦後、日本国憲法では、憲法二十六条第一項に教育を受ける権利の保障を掲げ、その具現化を図る教育基本法において、(1)教育の機会均等の原則、(2)義務教育の無償化、(3)教育の政治からの中立性などを定め、子どもたち一人一人の学習権を確保してきました。

しかし現在、安倍政権が進めている一連の教育制度改革を見ますと、まるで、戦前の中央集権的な、国家統制型教育を取り戻したがっておられるように見えてなりません。「私が決めるんです」と言って憲法九条の解釈を覆し、立憲主義を破壊しようとしている安倍総理とは言え、まさか、教育権の解釈まで変えてしまおうとお考えなのでないと信じますが、そのことを確認するためにも、①戦後政府は、戦前の教育体制をどのように総括し、反省してきたのか、また、②現行憲法が保障する教育権の内容をどのように解釈し、その実現に努めてきたのか、安倍総理の認識をご説明下さい。

その上で、憲法が国民に保障した教育権を、全ての国民、とりわけ子どもたちに確保するため、これからも引き続き全力で努力していくことについて、安倍総理の決意をお示し願います。

以下、政府提出法案の具体的な中身についてお伺いします。

2.  現行の地方教育行政における責任体制のあり方と今回の改革の方向性について
(安倍総理)

まず、地方教育行政における責任体制のあり方をどのように改革するのか、という点についてお聞きします。

政府は、本法案の提案理由について、衆議院における審議でも繰り返し、「現状では国=文科省と、都道府県の教育委員会、市町村の教育委員会、そして学校現場との四重構造で、これらがもたれ合いによってどこに責任があるのか分からない」ため、「地方教育行政においては、最終的な責任は教育長にあるとするのが今回の改正案」であると説明しています。

しかし今回の改正案では、教育委員会制度を現行のまま執行権限とともに残しつつ、首長主宰による総合教育会議を新たに設置して、屋上屋を重ねた結果、地方教育行政に四重構造どころか五重構造を生み出そうとしているように見えます。

まず、政府案が、地方教育行政に五重構造を生み出して、かえって責任体制に混乱を引き起こし、意志決定や教育行政の遂行を停滞させるのではないかという懸念に対し、そうならない保証が今回の法案上、どこに、どうあるのか、これでなぜ、責任体制がより明確になると言えるのか、安倍総理にお聞きします。

 

3.  総合教育会議の創設と教育委員会との関係について(安倍総理)

その上で、総合教育会議の創設と、教育委員会との関係について、特に、教育の政治からの中立性をどう確保していくのかという観点から伺います。

安倍総理は、総合教育会議は決定機関ではなく、決定権者も決まっておらず、あくまで首長と教育委員会という執行機関同士が協議し、調整を図りつつ、民意を反映した教育行政を推進していくことを目的としていると説明しています。

しかし改正法案では、総合教育会議で議論できる課題に明確な制限はありません。であるとすれば、首長が、または首長と首長によって任命される教育長との連携によって、総合教育会議の議題を政治主導で決定し、本来、教育委員会に属すべき権限の範疇まで踏み込んだことを議論して、総合教育会議の場で教育の方向性と大枠を決めてしまうことも可能なのではないでしょうか?

そうなれば、後ほどお聞きする監査体制の脆弱性とも相まって、教育委員会を執行機関として残した意味がなくなり、教育の政治からの中立性も確保出来なくなるのではないでしょうか?

安倍総理、そうはならないと言うのであれば、ぜひその根拠を具体的に示しながらご説明下さい。

 

4.  大綱の位置づけ、内容と教育委員会の権限との関係について(下村大臣)

続いて、総合教育会議で決定されるべき大綱の位置づけと内容についてお伺いします。

政府は、大綱の決定権者は首長であると明確に述べつつも、これによって教育委員会の権限に属する事務の管理、執行権を首長に与えたものではないとも説明しています。しかしその一方で、あらゆる課題を議題に載せて協議することは否定されないし、かつ、その上で大綱に記されたことは実行に移されるのは当然とも言っています。この矛盾に満ちた説明をどう理解すればよいのでしょうか?

結局、首長がそう決めれば、大綱に教育委員会が同意しないことまで記載され、首長に任命されている教育長は、それを実行せざるを得なくなるのではないでしょうか? まして、先ほど指摘した通り、首長と教育長が協力すれば、大綱にあらゆることを書き込んで、教育委員会の権限と役割を制限してしまうことも可能であり、政治の暴走を止めることが出来なくなるのではないでしょうか?

下村大臣、首長が、大綱を利用して、本来、教育委員会の権限に属する事務の管理、執行権を侵したりしないことをいかに法令上担保されるおつもりか、明確な説明をお願いします。

 

5.  首長による教育長の任命と教育長の任期を3年としたことの矛盾について
(下村大臣)

次に、教育長の任期を3年とした点についてお聞きします。

政府は、教育長を首長の直接任命とした理由は、首長の任命責任が明確化することだと説明していますが、一方で、教育長の任期を3年としたことによって、任命した首長が選挙で交代してしまった場合には、その任命責任が失われてしまうことになります。新しい首長の教育方針が前任者と異なる場合には、首長と教育長との間に溝が生まれ、かえって教育行政を混乱させる結果を招くのではないでしょうか?

また、結果的に、首長が交代した場合には教育長も辞めざるを得なくなる状況を招き、かえって制度の形骸化を招く恐れはないのでしょうか?

これら二つの懸念について、下村大臣のご説明をお願いします。

6.  教育長の権限の拡大について(下村大臣)

次に、教育長の権限拡大についてお聞きします。

まず、今回の法案によって、教育長と教育委員長が統合されるわけですが、これによって教育長の権限は現行と比べてどの領域でどれだけ強化されるのか、現行法との比較において具体的にご説明を願います。

併せて、なぜそのような教育長の権限の強化が必要なのか、それによって、現状の地方教育行政上の課題がいかに解決されるのか、下村大臣、ぜひ分かりやすい具体例を挙げて明確にご説明をお願いします。

7.  教育長及び教育委員会事務局の職務執行に対するチェック機能について(下村大臣)

その上で、それだけ権限が強化される教育長が、万が一にも暴走してしまった場合、またそのような暴走を未然に防ぐために、誰がどのように教育長の職務執行状況とその内容をチェックして、歯止めをかけるのでしょうか?

今回の改正法案提出の一つのきっかけとなった2011年の「大津市いじめ事件」では、事件後、第三者調査委員会が報告書の中で、「教育委員に対して教育委員会事務局や学校側から詳しい情報提供がなく、委員が重要な決定のらち外に置かれていた」ことを指摘し、「重要なのは教育長以下、事務局の独走をチェックすることである」として、教育委員会事務局が執行する事務を監査する部署を外部に設置することなどを提言しています。

しかし、今回の政府案には、教育委員会事務局の強化や体制の見直し、第三者による監査制度の導入などの具体的な改善策は見当たりません。本法案において、教育長や教育委員会事務局に対する有効なチェック機能がどう確保されているのか、また、教育長と教育委員との間の情報格差を無くすためにどのような対策が講じられるのか、下村大臣、ご説明をお願いします。

加えて、学校当事者や市民などによる有効なチェック機能を働かせるためにも、総合教育会議及び教育委員会での議事録の策定、及び公開の義務化は必須だと考えますが、なぜ、義務化されないのでしょうか? 下村大臣は、可能な限り議事録を作成し、公表するよう指導していくと説明されておりますが、そうであれば、むしろ原則、義務化して、規模の小さい教育委員会には必要な支援や補助を提供する方がよっぽど改革の整合性があると考えますが、なぜそうしないのか、併せてご説明をお願いします。

 

8.  教育に学校現場の当事者の参加・参画を確保する必要性について
(安倍総理)

最後に、教育に、学校現場の当事者の実質的な参加・参画を確保することの必要性についてお聞きします。

下村大臣は、衆議院の答弁の中で、緊急のいじめ問題への対応については、基本的には学校現場で解決すべきであって、いちいち総合教育会議にかけることではないと説明しています。とすれば、今回の改正案においては、むしろその学校現場での対応力強化について具体的な策を講じるべきだと思いますが、この点について政府案では何ら改善策を示しておりません。

そもそも、緊急事態のみに限らず、個々の子どもたちの興味や個性に応じた豊かな教育を提供していくためには、学校現場の教育関係者や当事者である親御さんたち、またそれぞれの学校を支える地域のコミュニティーの皆さんが学校運営に参加・参画し、子どもたちに最も近いところで様々な課題が迅速に解決される仕組みこそ必要なのだと思います。

この点について、なぜ今回の改正でそのことに焦点が当てられていないのか、今後、学校運営協議会を全ての学校に必置にして、学校現場における教育体制をより充実・強化していく考えはないのか、安倍総理の見解をお願いします。

 

以上、政府提出法案に対する質問を申し述べました。

安倍総理は、衆議院本会議における我が党の菊田真紀子議員の代表質問に対して、「民主党政権は、政権を担っていた三年間、教育改革に何をやったのでしょうか」と驚くべき発言をされています。しかし安倍総理が一番よくご存じのはずです。民主党政権下では、教育予算の拡充、公立高校の授業料無償化の実現、国際人権規約の留保撤回、奨学金の拡充、少人数学級の推進、そしてコミュニティスクールの導入促進など、具体的な改革を実現しています。

そもそも、着実に成果を出していた公立高校授業料の無償化を、その意義も理解せず、政権に戻るや撤回したのは安倍政権ではないですか。その一方で、少人数学級や奨学金制度など、民主党教育改革のいい所はそのまま維持・推進しながら、それをさも、自分の手柄のように言い回っているのもあなたの政権ではないですか。

民主党政権の成果を苦々しく思うのはいいですが、事実をねじ曲げ、政局判断でいい政策を潰して、子どもたちに被害を与えるのは看過出来ません。

冒頭に、私の懸念を申し上げましたが、今、安倍政権が進めようとしているさまざまな教育改革は、教育における国の介入を強化し、国家の意思や特定の思想信条を教育現場や子どもたちに押しつけ、さらにはテストの点数で子どもたちや学校を競わせて、その結果のみで優劣をつけ、差別化するなど、国が、子どもたちを自分たちの思う方向へ誘導する、まるで、戦前の教育への回帰を図っているのではないかと思えてなりません。

今回の地教行法の改正は、60年に一度の大改正であり、憲法で保障された教育権を、そして日本の次代を担う子どもたちの豊かな学びの権利を、地域社会全体で支え、強化していくための改正でなければなりません。そのためには、責任体制を明確化しつつも、教育の政治からの中立性と地域の独自性を確保し、子供たちに最も近い学校現場の教育体制を強化していくことこそ、私たちが実現しなければならないことだと信じます。

これから始まる参議院での審議を通じて、より望ましい方向に地方教育行政を進めていくことができるよう与野党あげて取り組んでいくことを要請し、私の質問を終わります。

 (了)

ILO議連の臨時総会&第2回勉強会を開催!

 

今日、5月22日(木)、私が事務局長を務めている「ILO活動推進議員連盟」の臨時総会と、今年度第2回目の勉強会を開催しました。

 

開会後、まず、会長人事の提案、承認のための臨時総会を実施。実は、これまで議連の会長を務めていただいていた自民党の高村正彦衆議院議員が、自民党副総裁としての業務があまりに多忙になり、議連の活動に迷惑をかけたくないということで交代。新たに、元厚生労働大臣の、川崎二郎・自民党衆議院議員に会長に就任いただくことになりました。

 

満場の拍手で会長に就任された川崎新会長は、長らく自民党の労働問題調査会の会長を務めてきた経験を生かし、ILOが取り組む諸課題にしっかり対応していきたいと決意を述べられました。

 

続いて開催した勉強会では、来たる5月28日(水)から6月12日(木)まで開催される第103回ILO総会(スイス・ジュネーブ)の議題と主なポイントについて議論。まず、政府側理事である伊澤章・厚生労働省総括審議官(国際担当)より総括的なご説明をいただいた後、労働側理事の桜田・連合国際顧問、使用者側理事の松井・経団連国際副本部長より、それぞれ、総会に臨む態度についてご説明をいただきました。

 

今度の総会では、常任委員会の他、3つの特別委員会が開催されます:(1)1930年の強制労働条約(第29号)の補完に関する委員会、(2)インフォーマル経済からフォーマル経済への移行促進に関する委員会、(3)雇用に関する委員会、です。(1)については、中核条約である第29号条約について、時代に合わなくなっている規定の改廃を行い、それを拘束性のある議定書か、拘束性のない勧告のいずれかの形で規定しようというもので、今年の総会で結論を得るとのことです。また、(2)については、新たな勧告の採択をめざし、今年1次討議を行って、来年の総会で結論を得る方向という説明でした。

 

なお、2012年の総会で、史上初めて労使が合意できずに審議が吹き飛んだ条約・勧告適用委員会については、2年経った今でもその余波を引きずっているようではありますが、今、労使の代表組織間で審査案件のリストアップ作業が続いているとのこと。ひょっとすると、日本案件で81号条約(労働基準監督)が審議リストに入るかも知れないとのことですが、これについては最終的な決定を待ちたいと思います。

 

なお、ILO総会の結果については、今通常国会中に議連会合を開催して報告をいただき、フォローしていくこととしました。以上、今日の議連会合のご報告です!