民主党 厚生労働部門会議 (代理出席報告)

10月14日(水)夕刻、民主党 厚生労働部門会議が急遽開催され、「マイナンバー制度関連業務を巡る収賄容疑での厚生労働省職員逮捕」について厚生労働省からヒアリングを行いました。主に議論になったことは、以下の3点です。

1)報道に出ている1件、100万円受領だけですむのか?この会社が厚生労働省から契約を受注した他の6件でも同様の余罪はないのか?

2)昨年は半分程度しか出勤していなかったとの報道もあるが、職員の勤務実態を組織としてどのように把握をしているのか?逮捕された職員個人の問題なのか厚生労働省の組織の体質の問題なのか?

3)この問題についての塩崎厚生労働大臣のコメントが全くないのはどうしてか?国民の代表として、謝罪もなければ具体的な対策も示されていない。役所の記者会見だけで終わらせるつもりなのか?

 

上記3点とも、厚生労働省の担当者から不十分な回答しか得られなかったため、引き続き部門会議でこの問題について徹底追及をしていくと同時に、自民党に対して臨時国会を開催しないのであればこの問題に関する閉会中審査を早期に開催することを要求していくことになりました。  (報告者 田中秘書)

 

民主党 TPPに関する関係部門合同会議  (代理出席報告)

10月8日(木)午前に、アメリカのアトランタで開催されたTPP交渉の大筋合意の内容について、関係省庁よりヒアリングを行いました。今日は初回ということもあり、主に総論部分について出席議員とのあいだでさまざまな質疑応答が行われました。とりわけ、今までTPP交渉過程の情報開示がまったくなされてこなかったことから、正式なTPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)の日本語版が出来上がるメドやTPP協定の発効に至るプロセス、アメリカ議会の動向等について質問が多く出ました。

今後は、民主党内にTPP調査会を設置して、全部で25章からなる膨大なTPP協定について、分野ごとに詳細な説明を受け、日本の国益にかなう内容になっているのかしっかり検証していくことになりました。  (報告者 田中秘書)

世界保健機関(WHO) 「高齢化と健康に関するワールド・レポート」発表

世界保健機関(WHO)は、2050年までに全世界で60歳超人口が今の12%から22%とほぼ倍増する見込みであり、社会的な大変革が必要で高齢者への支出はコストではなく「投資」と考えるべきとの「高齢者と健康に関するワールドレポートWorld report on ageing and health 」を10月1日に発表しました。

報告書の主なポイントは、以下のとおりです。

1)高齢者を社会の「重荷」とする差別的な考え方があるが、年金や医療などのコストと税金や経済活動を通じた貢献を比較した結果、高齢者の社会への差し引きの貢献が約400億ポンド(約7兆4600億円)になり、2030年には770億ポンドに達するとのイギリスの研究を紹介しながら、医療や介護などの費用負担が強調され高齢者の社会貢献が過小に評価されていると指摘。政策としてもコスト削減の努力をやめ、高齢者の活動を支える投資により注力していくことが重要。

2)非常に多くの部門や影響力の大きい人たちが健康な高齢化に影響を及ぼしうるが、高齢者のニーズや希望をその中心に置いた政策や実践においては、組織的なアプローチが非常に重要になってくる。導入のための優先課題としてほぼすべての部門を横断するような次の3つのアプローチを特定した。
1. 年齢差別と戦う。
2. 自律性を可能にする。
3. あらゆる政策と政府のすべてのレベルにおいて健康な高齢化を支援する。

3)高齢化と高齢者に関する社会的通念を根本的に変えるために3つのアクションを提示。これらのアクションを実行することによって、高齢者の新しい生き方を創出できるとした。
①高齢者にとって住みやすい環境を整える。33カ国の280都市が参加するWHOのエイジ・フレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)のグローバルネットワークが良い例となる。

②高齢者のニーズに合った保健システムの再編、調整を行う。これは急性疾患への対応を重視してきたこれまでの体制から、高齢者に多い慢性疾患に対応する体制へのシフトを意味する。在宅ケアやコミュニティ密着型のケアモデルが必要となってくる。

③介護システムの開発を行う。政府は不適切な急性期治療を減らし、高齢者が尊厳を持って生きられるよう長期介護システムの策定に取り組む必要がある。また、家庭では家族は協力して介護に取り組み、女性を開放してもっと社会で活躍できるよう支えるべき。

日本のこれからの社会保障政策にも必要な内容が多く含まれています。ご関心のある方は、WHO高齢者報告151001world-report-ageing-exs-japanese-rev をご参照下さい。(文責 田中秘書)

 

外国人技能実習生が働く事業所の4分の3で法令違反!

厚生労働省は、9月30日に平成26年に労働基準法などに基づいて立ち入り調査した外国人技能実習生が働く3918事業所のうち、約4分の3に当たる2977事業所で法令違反があったと公表しました。違反事業所の数は、統計が公表されるようになった平成15年以降で過去最多でした。

違反の内訳は、違法に時間外労働をさせていた労基法違反が1010事業所(25.8%)と最も多く、業務の安全配慮が不十分といった労働安全衛生法違反が919事業所(23.5%)、時間外労働などへの割増賃金の不払いが698事業所(17.8%)と続いています。

なかには、時給が約310円だったり、労使協定に違反して月に約120時間を超える時間外労働をさせたりしたケースもあり、石橋議員が厚生労働委員会でもたびたび取り上げてきたとおり現行の外国人技能実習生の劣悪な労働環境が一向に改善されていないことがあらためて数字で裏付けられました。詳しい情報は、下記資料をご覧ください。

外国人技能実習生事業所立ち入り調査結果(平成26年)

 

安倍内閣は、このような状況下で外国人技能実習生の更なる受け入れ拡大を目指した法案を前通常国会に提出し、現在 衆議院の法務委員会で継続審議の扱いとなっています。引き続きこの問題についてもしっかりフォローしていきます。     (文責 田中秘書)

民主党 非正規雇用・ワーキングプア対策チーム 派遣労働など労働問題を考える分科会  (代理出席報告)  

9月30日(水)午後、標記会議が開催され、「ドイツの労働市場改革の成果~ハルツ法改革10年」というテーマで立正大学法学部の高橋賢司 准教授よりご講演をいだだきました。

主な内容は以下のとおりです。

1)ハルツ法制定の経緯

2000年代の初め、ドイツは経済成長や失業率の面で主要国と比較してあまり成果が上がらない状況にあった。そこで、連邦雇用庁の改革と企業・労働組合・学界・政界の代表者で構成されるハルツ委員会を発足させ、3年間で400万人の失業者を200万人に削減するための4つの法案からなるハルツ法を制定した。

2)ハルツ法の主な内容

①派遣期間の撤廃や同一賃金原則、人材サービスエージェンシー(PSA)の設置等派遣法の規制緩和 ②教育訓練クーポンの導入や中高年に対する補助金の創設等失業保険法改革 ③個人創業助成金による自立強化 ④月400ユーロまで労働者の所得税と社会保険料が免除されるミニジョブの創設 ⑤連邦雇用エイジェンシーの発足 ⑥失業保険の給付期間の制限 ⑦失業扶助と社会扶助の一部を統合した基礎保障制度を導入

3)ハルツ法の評価

①最大の目的だった失業率は低下し、長期失業者も減少した。ただし、ハルツ法の効果とみるか輸出の好調により景気が持ち直したためとみるかは評価がわかれる

②確かに仕事には就いたが、ワーキングプアが増加し十分生活できない層が拡大した。ミニジョブも確かに労働者の負担は減るが、本来使用者が従業員が食べていけるだけの賃金を保障せずに国が肩代わりする形となり、国の財政負担が増え保険料を基礎とする社会保障制度を長期的には弱体化させることになる

4)ドイツの再改革(うすい雇用の修正)

①2015年1月より原則8.5ユーロとする最低賃金を施行 ②期間無制限の派遣を禁止し、最大で18か月までとする派遣法の再規制の導入

5)日本へ示唆するもの

①ミニジョブや派遣の規制緩和は、更なる貧困を招き、特に最低賃金が不十分な場合には、ワ-キング・プアが起こりうる。

②ドイツと比べて日本の雇用保険+職業訓練給付金の支給期間が短く、雇用保険と生活保護の中間を拡充させる必要がある。

③長期的にみれば、派遣の再規制(一時的な労働に適合した制限的な派遣期間、平等取扱原則)、最低賃金・求職者支援の拡充が日本でも不可欠。

 

引き続き、日雇い派遣の規制緩和について厚生労働者よりヒアリングを行い、最後に山井座長の方から、「ドイツでも派遣法の規制緩和を見直して期間上限を導入しようとしているのに、我が国では全く逆の派遣法が今日施行されてしまった。日雇い派遣の年収要件も引き下げが検討されていてとんでもない話だ。ハローワークに今日から正社員より派遣の求人がどっと増えることになるのではないかと大変心配している。来月、民主党の共生社会本部としてドイツにハルツ法を含む労働市場改革の実態の視察に行ってくるので、今後の民主党の労働政策に生かしていきたい」とのまとめのあいさつで閉会となりました。  (報告者 田中秘書)

 

中国経済の課題と展望について  (代理出席報告)

9月29日(火)午後、民主党の政策勉強会が開催され、東京大学の社会科学研究所の丸川知雄教授から「中国経済の課題と展望について」ご講演をいただきました。

主なポイントは、以下のとおりです。

1)中国経済の短期的な課題

①中国の人口の46%が農村に住む一方、GDPに占める第1次産業の割合は10%と不均衡になっているので、5億人がこれから都市に移住してもおかしくないが、北京など大都市は都市戸籍の発行を抑え、都市の発展を意図的に遅らせている。つまり巨大な不動産需要への期待と実際の不動産需要とが釣り合っていない。

②株バブル崩壊後のゆくえは、中国政府が音頭をとって株を買い支えて株価を維持しているため、本当の適正水準がわからず、投資家は模様眺めしている。株を保有している投資家5000万人のうち時価10万元相当以上の保有者1500万人が株下落の影響を強く受けたとみられ、海外旅行や高額消費への影響が起きている。

③中国政府が公表しているGDP(国内総生産)統計への不信感、とりわけ各工業製品の生産量の停滞・落ち込みと6%の工業の成長率とのつじつまが合っていないことから、2015年1ー6月のGDP成長率は公表されている7%ではなく、5.3%と推計される。

2)中国経済の中長期的展望

①かりに2015年ー16年が5%台の成長になったとしても、中国のGDP(国内総生産)は、2027年ごろにはアメリカを抜いて世界最大になると予測される。そして今から15年後には、中国のGDPは日本の5倍以上となり、日本経済はアジアの1割程度の規模となる。(インドやASEAN10カ国にもGDPの数値を抜かれることになる)

②経済成長をもたらすのは、資本・労働・生産性の成長であるが、中国の就業者数は一人っ子政策の影響で、実は2015年つまり今年がピークとなっている。資本についても今は人々の貯蓄率が高く外国の投資も引く続き流入しているので、投資の資金源が豊富であるが、人口の高齢化にともない貯蓄率は次第に下がっていく。したがって2030年以降は、生産性の上昇が中国経済成長のカギとなってくるが、予測は難しい。伸びる要素としては、技術導入の余地が大きく、活発な研究開発投資と国家の科学技術奨励策が後ろ盾になっている点と国有企業の改革・民営化が進捗しつつある点をあげることができる。悲観的要素としては、枯渇する余剰労働力や改革の停滞・腐敗、そして生産能力の過剰をあげることができる。

3)中国の経済成長とアジア・アフリカ・ラテンアメリカ

①中国とASEANの貿易が近年 急速に拡大していて、このままの勢いが続けばASEAN域内の貿易よりも対中国貿易の方が多くなるかもしれない状況にある。2014年まで中国が大量に輸入していた鉄鉱石・石油・石炭などの値段が上昇し、中国が大量に輸出しているパソコンや携帯電話はだんだん安くなり、中国がまさに資源輸出国の経済を牽引していた。だが、中国の景気減速とともに一次産品の価格が急落し、中国への輸出依存度が高い国ほど大きな成長減速を記録している。

②これからは、中国国内での公共事業による需要回復だけではなく、途上国への直接投資・借款・援助によって外需を拡大できれば、中国から途上国への輸出拡大→中国の景気回復→途上国から中国への輸出拡大という好循環への復帰のシナリオが考えられ、AIIB(アジアインフラ投資銀行)やBRICS新開発銀行の設立もその文脈でとらえるべき。

最後に、一部の日本企業や日本人がアジアの成長のダイナミズムに背を向けているのは残念で、2030年には日本はアジアのGDPの1割程度になってしまうのに、AIIBのような仕組みにこのまま参加をしないでどうやって未来を切り開いていくのか大いに疑問と指摘され、講演が終わりました。  (報告者 田中秘書)

民主党 厚生労働部門会議 代理出席報告

2月6日の社会保障審議会 介護給付費分科会が、今年度の介護報酬改定を決定したことを受けて、急遽 民主党 厚生労働部門会議が開催され、厚生労働省から内容のヒアリングと、介護事業者やNPO団体、家族の会など6つの関係団体の方々から、介護現場の実状についてヒアリングを行いました。厚生労働省は、改定率全体は、マイナス2.27%だが、処遇の改善等必要な経費は確保したとの説明でしたが、現場の皆さんは口をそろえて、これだけ介護報酬を切り下げれば、労働条件の切り下げにつながり、離職者が増え、結局は介護サービスが成り立たなくなる懸念・危機感を切実に訴えられていました。山井座長は、まったく同感で、このままでは介護崩壊が始まってしまう。民主党はあきらめずに戦っていくと力強く宣言され、会議は終わりました。  (報告者 田中)

 

自民党のマニフェストを読む

先日、民主党のマニフェストをご紹介しました。すでに与野党各党がマニフェストを発表していますので、ぜひこの機会に、各党の政策を比較し、今後の進むべき道について考えてみる材料にしていただければと思います。

特に、与党自民党のマニフェストは、これまで2年間に及ぶ政権党としてのマニフェストですから、安倍総理の言う「この道」がどんな道だったのか、今どの辺を歩いて居るのか、今後どこへ行くのか、その手がかりを掴む上で一度、お読みいただくことをお勧めします。

その自民党マニフェストですが、やはり、「この道しかありません」と大きく掲げて、今後も安倍政治を続けて行くことを宣言しています。そしてそこには、「今、アベノミクスの成果が、日本を確実に再生させています」と大きく掲げられており、「雇用や賃金の改善は続いており、これまでの経済政策に間違いはありません」「雇用や賃金の増加を伴う経済の好循環の更なる拡大を目指します」と記述されています。

成果をアピールする指標でも、「就業者数は約100万人増加」「女性の就業者数が80万人増加」「有効求人倍率は22年ぶりの高水準」「賃上げ率は過去15年で最高」「企業の倒産件数は24年ぶりの低水準」という数字が踊っています。

これらの数字、決して嘘ではありませんし、歓迎すべきトレンドであることは間違いないと思います。ただ、その数字の中身についてもう少し正確に把握をしておかないと、間違った判断をしてしまうことになります。以下、3点だけコメントしておきます。

(1)「就業者数は約100万人増加」「女性の就業者数が80万人増加」

  • 役員を除く雇用者数で、2012年10ー12月期から2014年7ー9月期の変化は、正社員が3330万人→3305万人(25万人減)、非正社員が1843万人→1952万人(110万人増)です。つまり、増えたのは非正規雇用ですね。しかもその多くは、高齢者の非正規労働者(110万人のうち約70万人)でした。
  • 安倍首相は、「それでも雇用が増えたんだからいいじゃないか!」とか言って怒り出しそうですが、「雇用の質が大事」と何度も国会答弁で認めているのですから、「100万人増えた!」とだけ宣伝するのは違うのではないかと思います。非正規雇用労働者にはまったくと言っていいほど賃上げの恩恵は行き渡っていないことも付言しておきましょう。
  • さらに心配されるのは、世帯主の実質賃金の低下によって、家計が苦しくなり、専業主婦・主夫がパートに出なければいけなくなっている家庭が増加した可能性があることです。

(2)「有効求人倍率は22年ぶりの高水準」

  • 確かに有効求人倍率は全ての都道府県で改善しています。しかし大切なのは、求人の中身であり、実際に持続的な就労に結びついたかどうかです。まず、正社員有効求人倍率はあまり上昇しておらず、平均で0.67にとどまっています。
  • また、建設労働者など、一部の分野が平均を大きく押し上げていることも考慮しておかなくてはいけません。アベノミクスの第二の矢、大胆な財政出動がまたぞろ伝統的なハコモノ公共工事にばらまかれた結果、資格や技能の必要な建設労働者などの人材不足が顕在化したわけですね。残念ながら、多くの求人があっても、それがすぐに充足されるわけではありませんから、求人倍率の高さだけを競っても意味ないわけです。
  • 加えて、今、多くの都市では、医療・介護分野が一番の雇用創出分野(特に若年層)になっていて、この分野の求人倍率も高くなっています。が、この分野も残念ながら、なかなか求人が充足されませんし、されても持続しません。労働条件が悪いのがその原因の一つです。これまた、求人倍率だけ見ても有効な対策を検討できません。

(3)「賃上げ率は過去15年で最高」

  • 2.07%という数字は、連合が7月に公表した今年の春闘の結果(経営側から受けた回答の最終集計)の数字を引用しています。しかし、物価の上昇も過去15年のうちで最高になっている中で、ある程度の賃上げがあるのはある意味当然で、本来、物価上昇分+αの賃上げがなければ、賃金(生活)の改善とは言えないわけですね。
  • 労働者の実質賃金は、15ヶ月連続でマイナスを続けています。つまり、生活は悪化しているわけです。その事実をきちんと見ないと、正しい対策は打てないのではないでしょうか。

 

他にも色々と指摘したい点がありますが、この辺にしておきます。ぜひ皆さんも、マニフェストを手にとって、あれこれ疑問を投げかけてみて下さい!