7月30日(木曜日)、参議院厚生労働委員会で、「労働者派遣法改悪案(改正案)」が実質審議入りし、民主党会派を代表して、津田弥太郎議員と私が、それぞれ50分間の質問を行いました。

 

IMG_0945

すでにこのブログでも何度となく主張していますが、この労働者派遣法改悪案、まさに希代の悪法です。私たちは、昨年来、一貫して「断固、廃案にすべし」との立場で戦い、連合の皆さんとも連携・協力して、昨年は2度、廃案に追い込みました。しかし政府は、三度目の正直とばかりに今国会に再提出し、残念ながら衆議院では、この6月に、与党の数の力=強行採決で突破されてしまい、参議院に回ってきたわけです。簡単な戦いではありませんが、私たちは引き続き、徹底審議を通じて法案の問題点を炙り出し、廃案に追い込むことをめざして戦っていく覚悟です。

私たちがこの悪法に反対する理由は多岐に渡りますが、主たる理由を三点、挙げておきます:

  1. 派遣の期間制限が事実上、撤廃され、企業は実質的に経営上の判断において、業務単位で派遣を利用することが半永久的に可能になります。これからは一般業務でも、3年毎に派遣労働者を入れ替えさえすれば継続的に派遣を使い続けることが出来るので、正社員から派遣への代替が長期的に可能になる、つまり、今後ますます、正社員の数が減少していく危険性が高いわけです。
  2. 一方、労働者にとっては、これまで派遣の中では比較的雇用が安定していて処遇も良かった専門26業務が撤廃されてしまい、全ての派遣労働者が上限3年毎で雇用を切られる(または同一業務単位の部課を異動する)ことになり、全体的に派遣雇用の不安定化が促進されてしまいます。
  3. その上、政府が目玉と主張している「雇用安定化措置」やキャリアップのための「教育訓練提供義務」は、ほとんどその実効性が期待出来ず、正社員化や直接雇用化、経験やスキルアップに伴う処遇改善には結びつかない可能性が大です。

つまりは、派遣労働の構造的な問題である「雇用の不安定さ」「処遇格差」「企業メンバーシップからの排除や差別」「キャリア形成の困難さ」「労働基本権を行使出来ない立場の弱さ」などは改善・解消されないまま、期間制限だけが事実上撤廃され、派遣労働が拡大してしまうわけです。これでは、ますます雇用の非正規化、不安定化を拡大し、特に若者や女性の雇用を一層、厳しいものにしてしまうだけです。だから断固、反対するわけです。

さて、 今回の質疑で私が取り上げたのは、主に以下の項目です。質疑の詳細は、ぜひ参議院インターネット審議中継のHPでご覧をいただきたいと思いますが、結論から言えば、塩崎厚生労働大臣、全く答弁が出来ない。いや、事前の質問通告やら官僚レクで、どういうポイントについて質問すると伝えてあるにもかかわらず、的確な答弁が出来ないということは、そもそもちゃんとした制度設計がなされていないということに尽きるし、所管大臣が基本的なことも理解していないのでは、まともな審議は出来ないということです。とっとと廃案にして欲しい!

 

★IMG_7233

 

1)派遣労働制度(間接雇用制度)が持つ制度的な問題点についての認識

まず、最初に「派遣労働」というのは、雇用の原則であるべき「正社員」、つまり「期間の定めのない、直接雇用のフルタイム社員」とは違うという認識を塩崎大臣がもっているかどうか、質しました。

その上で、「間接雇用」かつその多くが「期間の定めがある」契約である派遣労働の構造的な問題についての認識を質問。派遣労働は、「雇用が不安定」「処遇格差、安心格差」「会社のメンバーシップからの除外、差別」「キャリアップ・キャリア形成の困難さ」「労働基本権行使の困難さ」などの深刻な問題があることを指摘しましたが、大臣はあまりピンときていないようでした。

そして、処遇格差や差別の問題が解決・改善されないままに、派遣期間制限の実質撤廃が行われてしまえば、不安定かつ低賃金の派遣労働者が拡大し、固定化して、格差が拡大してしまうことになると指摘し、本法案によって「派遣労働者の賃金カーブが正社員並みに上昇していくことを約束できるのか?」と質しましたが、大臣は「それは自由経済なので保障は出来ない」と答弁。だったら、本法案が「労働者のため、正社員化のため、キャリアップや処遇改善のため」なんてウソを宣伝するなと怒り爆発です。

2)雇用安定化措置(第30条関連)の対象範囲(対象人員)とその実効性について

続いて、今回の法案改正の目玉とされているこの第30条の雇用安定化措置について確認。まず、雇用安定化措置が発動されるのはいつの時点で、逆にその義務が終了(完了)するのはいつの時点なのか質問したところ、塩崎大臣が度々、答弁に窮し、質疑がストップ。目玉の条文のはずなのに、塩崎大臣は全くこの条文の内容を理解していないようなのです。結果、残念ながら、質疑を深めることが出来ませんでした。

あまりに質疑が止まるので、厚生労働省としてこの第30条の始点と終点を対象労働者毎に整理し、委員会に資料を提出するよう求め、理事会協議事項としてもらいました。

ただ、酷い答弁の中で、いくつか重要な確認答弁も得る事が出来ました。まず、第30条の雇用安定化措置の対象には、①同一業務単位への継続派遣期間が1年〜3年未満見込みの場合と、②1年未満見込みの場合があって、②の一年未満見込みの場合は、同じ派遣元での通算雇用契約期間が1年を越える派遣労働者だけが適用対象なんですね。で、後者の場合ですが、同じ派遣元での通算雇用契約期間1年以上という条件さえ満たしている労働者であれば、次の派遣契約がどれだけの期間であろうが(極端に言えば1日でも)、雇用安定化措置の努力義務の対象になるのです(直接雇用の申し入れは対象外ですが、これはそもそも実効性ないのでいいでしょう・・・苦笑)。あくまで努力義務ですが、登録型でも短期の細切れ派遣でも、派遣元に雇用安定化措置の努力義務を果たすプレッシャーをかけられるのは大きいです。

加えて、この雇用安定化措置は、同一業務単位への継続派遣期間が3年見込みになると、努力規定ではなく義務規定になります。問題は、一体どの時点で3年見込みの対象になるのか、ということなのですが、これは、「派遣期間が3年に達する派遣契約が締結された時から」という整理との答弁です。つまり、同じ業務単位への派遣契約が1年契約の場合は、2回目の更新で3年目に入った時以降、義務規定となって派遣元はその義務を果たす必要があるわけです。もちろん、2回目の更新に達する以前も、1回目の更新時点で努力規定はかかっていますので、その時点から派遣元は努力することが求められます(この場合は直接雇用の申し入れも含む)。

これらの確認は、今後の議論に重要なので、ぜひ皆さんも押さえておいて下さい。

しかしここで、深刻な問題が生じます。派遣元の多くは、恐らく、義務規定(第30条第2項)逃れをしてくるであろうという問題です。つまり、上記の場合、2回目の更新をせず、当該派遣労働者を他の派遣先(同一事業主の他の業務単位への異動でもいい)に移してしまえば、3年見込みにはならないので、義務規定逃れが出来てしまうわけですね。これを許していては意味がありませんので、「このような義務規定逃れは立法趣旨に違反する行為か?」と質したところ、「そうだ」との答弁。これはOK。しかし、「ではそのような脱法行為(義務規定逃れ)を繰り返す悪質な派遣元事業主は、許可取り消しを行うべきと考えるがどうか?」との問いには、「義務規定違反ではないので、許可取り消しまではできない」という答弁。もちろん、ここで紛糾!

皆さん、お分かりですね。雇用安定化措置(第30条)は、政府曰く、本法案の目玉です。しかし、その適用が義務になるのは、3年見込みの労働者のみです。だから義務規定逃れのような脱法行為を許してしまったら全く意味ないわけですが、政府はそんなことさらさらやる気無いことが暴露されてしまったわけです。塩崎さん、自ら認めってしまいましたね〜。はい、これじゃやっぱり効果なしで、悪法です。

というところまでで、結局、まだ私の用意した質問の5分の1も終わっていない状況で、質問時間が来てしまいました。いやいや、初日の審議状況だけでも、この法案がいかに酷い代物か、お分かりいただけたと思います。これからまだまだ審議は続きます。しっかり追及して、断固、廃案に追い込んでいきたいです。