7月7日(火)に、参議院内閣委員会で「国家戦略特区法改正案」の質疑に立たせていただいて、私が特に問題意識を持っている「外国人家事支援人材受入制度」の問題について、1時間、担当である石破茂大臣を中心に、質疑させていただきました。

 

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私たち民主党は、本改正案に反対の立場で質疑に臨み、当日午後の委員会採決、及び7月8日の参議院本会議でも反対票を投じましたが、残念ながら賛成多数で可決してしまいました。そこで、翌7月9日(木)に、今度は参議院厚生労働委員会(一般質疑)において、あらためてこの「外国人家事支援人材受入制度」の問題を取り上げて、塩崎厚生労働大臣に対して質疑しました。

 

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私が、特に問題視している点は以下の3点です。

1.家事代行サービス業への外国人家事支援人材の受け入れが、市場動向調査も雇用実態調査も行われず、何の根拠もなく実施されようとしているのではないか?

私がこの問題について調査し、質疑を行ってびっくりしたのが、昨年4月に最初に提案がなされてから、昨年6月に閣議決定(日本再興戦略2014改訂版)がなされ、さらに今年4月に法案提出に至るまで、家事代行サービス業界について、何の市場動向調査も雇用実態調査もやられていなかったことです。

今回の提案は、そもそも「人手不足」の解消と、「女性の活躍促進」を目的に(名目上は)提案されているのです。しかしそれにもかかわらず、市場や雇用の動向がどうなっているのか調査していないというのですから、「じゃあどうやって人手不足と判断したのか?」という問いにまともに答えられないわけです。政府が言い訳がましく引っ張り出してきたのは、何年も前に民間の調査機関がやった調査。政府は実態を把握していません。

石破担当大臣に、「もし市場が拡大していて、人手不足なら、賃上げや労働条件の改善をして、よりよい雇用を日本人労働者に提供できるじゃないか?なぜそれをやらないのか?」「なぜ外国人に家事支援をさせるのか?」と追及しても、「選択肢を増やすため」としか答えられないのです。「では、外国人を受け入れて、結果的に日本人労働者の雇用や賃金にマイナス効果が出たらどうするのか?」と聞いてもまったく答弁できません。そりゃそうです。実態がわかっていないのですから・・・。

まずは、雇用実態調査をちゃんとやらなければなりません。塩崎厚生労働大臣にもそのことを重ねて要求したのですが、全く気のない答弁でした。この人、本当に問題がわかってないし、労働者のために働く気がないとしか思えません・・・。

2.この制度が日本人労働者の雇用を奪ったり、賃金水準を引き下げたりしないか?

私が限られた資料で確認したところ、家事代行サービスの市場は拡大している様子。つまり、雇用も拡大していて、この分野は圧倒的に女性の職場だけに、女性によりよい雇用を提供できる可能性があるのです。「まずは、日本人の雇用機会拡大を図るべきでは?」と重ねて要請。そして、外国人家事支援人材を導入した場合、日本人の雇用機会を奪ったり、賃金水準を引き下げたりしないよう、具体的な措置をしっかりととるべきだと要請しました。

実は、昨年6月に閣議決定された、日本再興戦略2014改訂版の中に、大変気になる方針が示されているんです。そこには「安価で安心な家事支援サービスの実現」をめざすと書かれていて、その流れで「外国人家事支援人材の活用」が提案されてきたんです。つまり、これを素直に読めば、安い労働力の導入のために外国人を連れてくる、と読めちゃうのですね。

これに対しては石破大臣も、「政府の責任において、日本人労働者との間の不当な差別待遇は絶対に許さない。均等待遇は必ず確保する」と答弁されましたが・・・。しかし現状で、日本人と外国人との均等待遇を確保する労働法令はないのです。つまり、このままでは、労働基準監督署も取締りの根拠法令がないわけですね。これで均等待遇を確保するには、何らかの具体的な制度設計と政令等での措置を講じなければならないわけで、そのことを塩崎大臣に強く求めておきました。

3.外国人労働者の人権侵害や搾取につながらないか

今回、外国人労働者を「家事支援サービス業」に受け入れるということは、一般的にいって「単純労働」の受け入れに道を開くものであると考えられるわけです。政府は「質の高い人材を受け入れるので、単純労働の受け入れではない」と苦しい取り繕いをしていますが、どうごまかしてもそりゃムリですね。家庭内での炊事や洗濯については、その技術レベルを評価する資格はないわけで、明確な区分が出来ないのですから。政府がどのような制度設計をして在留資格を出すのか、注視していきたいと思います。

その上で、私たちが心配しているのは、この制度がまたしても、外国人労働者の人権侵害や搾取につながらないかということです。なにせ、制度設計がまったくもっていい不十分ですし、今のところ、これまで深刻な問題を引き起こしてきた「外国人技能実習制度」の教訓を踏まえて検討しているとは到底、思えません。受け入れを行う「認定機関」に全てを任せ、送り出し国側の体制も認定機関任せのようですから、容易に悪質なブローカーが介在して、人権侵害が起こってしまう懸念があるのです。

石破大臣にも、そして塩崎大臣にも、この点について万全の制度設計と監視体制を講じるように要請しましたが、いかんせん、問題の本質を分かっていない人たち。心配です・・・。

今回、またしても「本音と建て前」を使い分けて、この外国人家事労働人材の受け入れ制度を導入しようとしていることに、強い憤りを覚えます。これまで何度となく繰り返してきていますが、法制度上の建前(設計)と、本音(現実の運用)とが大きく乖離することによって、労働者の人権侵害や搾取という深刻な問題を生じさせ、それに対して法令も行政も適切な対応が出来ず、問題を深刻化させてしまうという悪循環を繰り返してしまう懸念です。

今回の場合は、日本人、特に女性労働者の雇用や労働条件にも悪影響を及ぼしてしまう重大な懸念もあります。 政府には、重ねて、もし今回の制度によって、日本人労働者、特に女性の雇用を奪ったり、家事労働者の賃金や労働条件の低下を招いたり、外国人家事労働者の人権侵害などの事態が発生した場合には、即刻、制度の中止ないし抜本的見直しを図るべきことを要求していきますし、私たちも、しっかりと制度設計と、実際の運用を監視していきたいと思います。