お知らせしていた通り、2月6日に行われた参議院決算委員会で、民主党会派を代表して質問に立ちました。約2年ぶり2回目のNHKテレビ中継入りの質問でしたが、さて、皆さん、テレビでご覧戴けたでしょうか?

 

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「決算の参議院」と言われるぐらい、参議院は決算審議に力を入れています。途中で解散のない6年間の任期を持つ参議院議員だからこそ、継続的にじっくりと国の決算をチェックして、問題を質し、それを今後の予算に反映させていくというプロセスの担い手になり得るわけですね。

さて、今回の質疑で私が取り上げたのは、(1)中東における日本人拘束事件に関するトルコ外相の発言、(2)政府債務の現状と国債費及び利払費の将来展望、(3)公共事業の乗数効果と雇用創出効果、そして(4)20年に及ぶ労働者の賃金低下の理由とアベノミクスの効果、などについてです。詳細はぜひ、参議院インターネット審議中継で録画をご覧頂きたいと思いますが、以下、いくつかの重要な点に絞って報告しておきます。

 

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まず、2013年度決算では、国の債務が1,024兆9,568億円(国債や借入金、政府短期証券の合計)に膨れあがり、国債の利払い費だけで8.1兆円に上っています。にもかかわらず安倍政権は、アベノミクスの第二の矢である財政出動を続け、今回も補正予算と本予算と合わせて大型の予算を組んでいます。適切かつ効果のある財政出動であれば議論の余地はあるのですが、しかし今回もまた、効果の疑わしい伝統的な公共事業や防衛支出に多額の支出をしているので、その点を私たちは追及しているわけです。

実は、昨年7月に内閣府が行なった長期試算があって、それによると、安倍政権の目標である「経済成長率実質2%以上」を達成した場合、2020年度頃には「長期金利は4%程度に上昇」して、「国債費(国債の利払いや償還に当てる経費)は足元の20兆円台前半から40兆円程度に増加」とされているのです。この予測に基づいて国債の利払い費の伸びを予測すると、2020年頃から急増して、2035年には国の歳出の37%ぐらいにまで膨張してしまうのです。

つまり、経済が成長しても、それ以上に国の借金返済の負担が大きくなってしまうことを意味しているのですね。安倍総理は、「安倍政権は財政健全化と経済成長の両立をめざしている」「経済成長すれば国債費のGDP比は押さえられるので大丈夫」と言い続けているのですが、しかしこの長期予測を一つのあり得るシナリオと考えれば、もっと真剣に財政健全化を考えなければならないはずなのです。質疑では、「財政健全化と言う割には無駄の削減などの取り組みが不十分だ」と安倍総理に指摘し、もっと危機意識を持つべきことを訴えました。

また、平成25年度決算では、公共事業関係費がなんと、前年比で2.2兆円も増加して、8兆円規模に膨らんでいたのですね。もはや伝統的な公共事業は乗数効果(例えば、1兆円の財政投入を行った時に、どれだけのリターンが期待できるかを表す指標)が薄いと理解されているのです。にもかかわらず8兆円もの財政を投入したわけですから、その政策効果をしっかりと提示してもらわないと困るわけです。ところが、私が「乗数効果、雇用創出効果はどれぐらいだと分析しているのか?具体的な数値を挙げて説明して欲しい」と答弁を求めたのに対し、安倍総理も甘利大臣も答弁をはぐらかしてしまいました。実は、この2年間の統計を見ると、「建設関係の従業員数も建設従業員の賃金も、いずれもほとんど変化していない」のです。つまり、数字上は、政策効果が疑われるわけです。むしろ、全国的に巨額の公共事業費をばらまいてしまったが為に、東日本大震災の復興事業に大きな悪影響を及ぼした(人手不足や資材価格の高騰)ことの方が大きかったのではないかと思っています。

 

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そして最後が、私が今回の質疑で一番力を入れたところで、「平成25年度及びその後の安倍政権下での各種施策が、国民の暮らし、とりわけその多数を占める勤労者世帯の暮らしを良くしているのか?」という質問でした。

私がまず、安倍総理に訴えたのは、「この1〜2年のアベノミクスの効果を自分に都合のいい数字だけ挙げてあれこれ言うより、これまで20~25年間の日本のトレンドを正確に把握して、今、労働者がどういう状況に置かれているのか、問題は何なのかを正確に把握すべき」ということです。例えば、1990年以降の労働者の名目賃金及び実質賃金の推移をみれば、明らかに、労働者の賃金は1997年頃を境に今日に至るまで一貫して低下傾向が続いているのです。

で、安倍総理にそのグラフを示して「なぜ1997年から賃金は落ち込んでいるか総理はお分かりになるか?」と尋ねたのですが、残念ながら安倍総理はちゃんと答えてくれなかったのです。もちろん、この20年の間には色々なことがあって、様々な要素が絡んでいるのは間違いありません。しかし1997年以降、一貫して続いているのは「正規雇用が減って、非正規雇用が拡大している」というトレンドであって、そのトレンドと労働者への分配の低下が関連しているわけです。安倍総理には「この実態をきちんと把握していないから、労働法制をさらに改悪して、状況をもっと悪くしてしまうようなとんでもない政策を考えるのだ」と厳しく指摘せざるを得ませんでした。

で、またしても安倍総理は、「雇用状況は改善している。労働者の数も増えている。有効求人倍率もこの20年で最高だ!」と強弁したのですが・・・。

いや、この20年間を振り返っても、労働者数はほぼ一貫して増えているんですね。でも、1997年以降、増えているのは非正規社員であって、だから実質賃金は一貫して下がっているのが事実なのです。この2年間も、見事にそのトレンドの中にいるわけです。そう言ったら安倍総理は全く反論出来ませんでしたね。

また、有効求人倍率についてもあまりに自慢する(笑)ので、「じゃあその中身を分析しているのですか?」と聞き返すと、「質問通告されていないから答えられない」と逃げ出す始末。有効求人倍率が上昇しているのは、私たちも歓迎します。しかし、それだけ見て喜んでいては政治の役割は果たせないわけです。有効求人倍率は、あくまで求職者数と求人数の割合を示しているだけで、それは産業・分野毎、地域毎に全然違います。しかも、大事なのは実際にそれが就職に結びついたかどうかであって、かつ、ちゃんとした生活ができる雇用(正社員など)なのかどうかが大事なわけです。

例えば今で言えば、医療・介護分野はどこでも非常に高い求人倍率になっています。しかし、充足率はきわめて低いし、就職に結びついても離職率も高いのです。だから、有効求人倍率だけみて喜んでいてはダメで、「実際の雇用にどのように結びついているのかを見なければ、政治の責任を果たしたことにはならない」とこれまた安倍総理を批判せざるを得ませんでした。

加えて、安倍政権が間違った現状認識の下で、誤った政策をとろうとしていることの好例として「労働者派遣法改悪案」を挙げ、あらためて安倍総理と塩崎厚生労働大臣に法案の問題点を質したのですが、結局分かったのは、お二人とも法案の中身を全く理解せず、無責任に「いや、この改正は派遣労働者の為の改正だ」などと根拠のないことを言い続けているだけだということでした。

以上、決算委員会での質疑の概要でした。まだまだ、質問の仕方とか内容とか、経験不足の面もあったかと思いますが、働く者の代表として一生懸命、質疑に立ったことは自信を持って報告させていただきます!