事前にお知らせしていた通り、5月23日(金)に開催された参議院本会議で、民主党を代表し、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」に対する代表質問を行いました! 応援していただいた皆さん、ありがとうございました!

 

代表質問の全文を、下記に掲載しておきます。ぜひご一読を。実際に質問している様子を、参議院インターネット審議中継のページ(本会議、5月23日を選んで下さい)でご覧いただけますので、お時間ある方はぜひ動画でご覧下さい。気合いが入りまくっている様子がよく分かると思います(笑)

本会議に先だって行われた民主党・新緑風会議員総会でも、全議員の前で登壇の決意表明。「教育行政への国の関与を強めようとしている安倍政権に対し、地方教育行政のあるべき姿を追及するためにしっかり質問する!」と熱く決意を述べました。

今回は、約2年半振りの本会議登壇でしたが、重要広範議案に対する代表質問は始めてだったので、相当気合いを入れて準備もし、登壇してきました。まずまず、満足いく仕事が出来たと思います。本会議後に、多くの同僚議員の皆さんから「良かった!」と声を掛けていただいたのが嬉しかったですね!

 

 

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地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対する代表質問
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 民主党・新緑風会の石橋通宏です。

ただ今、議題となりました、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」につきまして、会派を代表して質問いたします。

1.  戦前の教育制度への反省と、日本国憲法が国民に保障する教育権の内容について(安倍総理)

冒頭、安倍総理に、戦前の教育制度への反省と、戦後、日本国憲法が国民に保障してきた教育権の内容についてお聞きします。

第二次世界大戦以前の我が国の「国家教育法制」は、国が国民を統制するための手段として、中央集権的な教育課程行政を実行し、その教育を受けることが国民の義務とされたため、結果、戦争の惨禍に国民全体を引きずり込む一つの大きな要因となりました。

その大いなる反省を基に、戦後、日本国憲法では、憲法二十六条第一項に教育を受ける権利の保障を掲げ、その具現化を図る教育基本法において、(1)教育の機会均等の原則、(2)義務教育の無償化、(3)教育の政治からの中立性などを定め、子どもたち一人一人の学習権を確保してきました。

しかし現在、安倍政権が進めている一連の教育制度改革を見ますと、まるで、戦前の中央集権的な、国家統制型教育を取り戻したがっておられるように見えてなりません。「私が決めるんです」と言って憲法九条の解釈を覆し、立憲主義を破壊しようとしている安倍総理とは言え、まさか、教育権の解釈まで変えてしまおうとお考えなのでないと信じますが、そのことを確認するためにも、①戦後政府は、戦前の教育体制をどのように総括し、反省してきたのか、また、②現行憲法が保障する教育権の内容をどのように解釈し、その実現に努めてきたのか、安倍総理の認識をご説明下さい。

その上で、憲法が国民に保障した教育権を、全ての国民、とりわけ子どもたちに確保するため、これからも引き続き全力で努力していくことについて、安倍総理の決意をお示し願います。

以下、政府提出法案の具体的な中身についてお伺いします。

2.  現行の地方教育行政における責任体制のあり方と今回の改革の方向性について
(安倍総理)

まず、地方教育行政における責任体制のあり方をどのように改革するのか、という点についてお聞きします。

政府は、本法案の提案理由について、衆議院における審議でも繰り返し、「現状では国=文科省と、都道府県の教育委員会、市町村の教育委員会、そして学校現場との四重構造で、これらがもたれ合いによってどこに責任があるのか分からない」ため、「地方教育行政においては、最終的な責任は教育長にあるとするのが今回の改正案」であると説明しています。

しかし今回の改正案では、教育委員会制度を現行のまま執行権限とともに残しつつ、首長主宰による総合教育会議を新たに設置して、屋上屋を重ねた結果、地方教育行政に四重構造どころか五重構造を生み出そうとしているように見えます。

まず、政府案が、地方教育行政に五重構造を生み出して、かえって責任体制に混乱を引き起こし、意志決定や教育行政の遂行を停滞させるのではないかという懸念に対し、そうならない保証が今回の法案上、どこに、どうあるのか、これでなぜ、責任体制がより明確になると言えるのか、安倍総理にお聞きします。

 

3.  総合教育会議の創設と教育委員会との関係について(安倍総理)

その上で、総合教育会議の創設と、教育委員会との関係について、特に、教育の政治からの中立性をどう確保していくのかという観点から伺います。

安倍総理は、総合教育会議は決定機関ではなく、決定権者も決まっておらず、あくまで首長と教育委員会という執行機関同士が協議し、調整を図りつつ、民意を反映した教育行政を推進していくことを目的としていると説明しています。

しかし改正法案では、総合教育会議で議論できる課題に明確な制限はありません。であるとすれば、首長が、または首長と首長によって任命される教育長との連携によって、総合教育会議の議題を政治主導で決定し、本来、教育委員会に属すべき権限の範疇まで踏み込んだことを議論して、総合教育会議の場で教育の方向性と大枠を決めてしまうことも可能なのではないでしょうか?

そうなれば、後ほどお聞きする監査体制の脆弱性とも相まって、教育委員会を執行機関として残した意味がなくなり、教育の政治からの中立性も確保出来なくなるのではないでしょうか?

安倍総理、そうはならないと言うのであれば、ぜひその根拠を具体的に示しながらご説明下さい。

 

4.  大綱の位置づけ、内容と教育委員会の権限との関係について(下村大臣)

続いて、総合教育会議で決定されるべき大綱の位置づけと内容についてお伺いします。

政府は、大綱の決定権者は首長であると明確に述べつつも、これによって教育委員会の権限に属する事務の管理、執行権を首長に与えたものではないとも説明しています。しかしその一方で、あらゆる課題を議題に載せて協議することは否定されないし、かつ、その上で大綱に記されたことは実行に移されるのは当然とも言っています。この矛盾に満ちた説明をどう理解すればよいのでしょうか?

結局、首長がそう決めれば、大綱に教育委員会が同意しないことまで記載され、首長に任命されている教育長は、それを実行せざるを得なくなるのではないでしょうか? まして、先ほど指摘した通り、首長と教育長が協力すれば、大綱にあらゆることを書き込んで、教育委員会の権限と役割を制限してしまうことも可能であり、政治の暴走を止めることが出来なくなるのではないでしょうか?

下村大臣、首長が、大綱を利用して、本来、教育委員会の権限に属する事務の管理、執行権を侵したりしないことをいかに法令上担保されるおつもりか、明確な説明をお願いします。

 

5.  首長による教育長の任命と教育長の任期を3年としたことの矛盾について
(下村大臣)

次に、教育長の任期を3年とした点についてお聞きします。

政府は、教育長を首長の直接任命とした理由は、首長の任命責任が明確化することだと説明していますが、一方で、教育長の任期を3年としたことによって、任命した首長が選挙で交代してしまった場合には、その任命責任が失われてしまうことになります。新しい首長の教育方針が前任者と異なる場合には、首長と教育長との間に溝が生まれ、かえって教育行政を混乱させる結果を招くのではないでしょうか?

また、結果的に、首長が交代した場合には教育長も辞めざるを得なくなる状況を招き、かえって制度の形骸化を招く恐れはないのでしょうか?

これら二つの懸念について、下村大臣のご説明をお願いします。

6.  教育長の権限の拡大について(下村大臣)

次に、教育長の権限拡大についてお聞きします。

まず、今回の法案によって、教育長と教育委員長が統合されるわけですが、これによって教育長の権限は現行と比べてどの領域でどれだけ強化されるのか、現行法との比較において具体的にご説明を願います。

併せて、なぜそのような教育長の権限の強化が必要なのか、それによって、現状の地方教育行政上の課題がいかに解決されるのか、下村大臣、ぜひ分かりやすい具体例を挙げて明確にご説明をお願いします。

7.  教育長及び教育委員会事務局の職務執行に対するチェック機能について(下村大臣)

その上で、それだけ権限が強化される教育長が、万が一にも暴走してしまった場合、またそのような暴走を未然に防ぐために、誰がどのように教育長の職務執行状況とその内容をチェックして、歯止めをかけるのでしょうか?

今回の改正法案提出の一つのきっかけとなった2011年の「大津市いじめ事件」では、事件後、第三者調査委員会が報告書の中で、「教育委員に対して教育委員会事務局や学校側から詳しい情報提供がなく、委員が重要な決定のらち外に置かれていた」ことを指摘し、「重要なのは教育長以下、事務局の独走をチェックすることである」として、教育委員会事務局が執行する事務を監査する部署を外部に設置することなどを提言しています。

しかし、今回の政府案には、教育委員会事務局の強化や体制の見直し、第三者による監査制度の導入などの具体的な改善策は見当たりません。本法案において、教育長や教育委員会事務局に対する有効なチェック機能がどう確保されているのか、また、教育長と教育委員との間の情報格差を無くすためにどのような対策が講じられるのか、下村大臣、ご説明をお願いします。

加えて、学校当事者や市民などによる有効なチェック機能を働かせるためにも、総合教育会議及び教育委員会での議事録の策定、及び公開の義務化は必須だと考えますが、なぜ、義務化されないのでしょうか? 下村大臣は、可能な限り議事録を作成し、公表するよう指導していくと説明されておりますが、そうであれば、むしろ原則、義務化して、規模の小さい教育委員会には必要な支援や補助を提供する方がよっぽど改革の整合性があると考えますが、なぜそうしないのか、併せてご説明をお願いします。

 

8.  教育に学校現場の当事者の参加・参画を確保する必要性について
(安倍総理)

最後に、教育に、学校現場の当事者の実質的な参加・参画を確保することの必要性についてお聞きします。

下村大臣は、衆議院の答弁の中で、緊急のいじめ問題への対応については、基本的には学校現場で解決すべきであって、いちいち総合教育会議にかけることではないと説明しています。とすれば、今回の改正案においては、むしろその学校現場での対応力強化について具体的な策を講じるべきだと思いますが、この点について政府案では何ら改善策を示しておりません。

そもそも、緊急事態のみに限らず、個々の子どもたちの興味や個性に応じた豊かな教育を提供していくためには、学校現場の教育関係者や当事者である親御さんたち、またそれぞれの学校を支える地域のコミュニティーの皆さんが学校運営に参加・参画し、子どもたちに最も近いところで様々な課題が迅速に解決される仕組みこそ必要なのだと思います。

この点について、なぜ今回の改正でそのことに焦点が当てられていないのか、今後、学校運営協議会を全ての学校に必置にして、学校現場における教育体制をより充実・強化していく考えはないのか、安倍総理の見解をお願いします。

 

以上、政府提出法案に対する質問を申し述べました。

安倍総理は、衆議院本会議における我が党の菊田真紀子議員の代表質問に対して、「民主党政権は、政権を担っていた三年間、教育改革に何をやったのでしょうか」と驚くべき発言をされています。しかし安倍総理が一番よくご存じのはずです。民主党政権下では、教育予算の拡充、公立高校の授業料無償化の実現、国際人権規約の留保撤回、奨学金の拡充、少人数学級の推進、そしてコミュニティスクールの導入促進など、具体的な改革を実現しています。

そもそも、着実に成果を出していた公立高校授業料の無償化を、その意義も理解せず、政権に戻るや撤回したのは安倍政権ではないですか。その一方で、少人数学級や奨学金制度など、民主党教育改革のいい所はそのまま維持・推進しながら、それをさも、自分の手柄のように言い回っているのもあなたの政権ではないですか。

民主党政権の成果を苦々しく思うのはいいですが、事実をねじ曲げ、政局判断でいい政策を潰して、子どもたちに被害を与えるのは看過出来ません。

冒頭に、私の懸念を申し上げましたが、今、安倍政権が進めようとしているさまざまな教育改革は、教育における国の介入を強化し、国家の意思や特定の思想信条を教育現場や子どもたちに押しつけ、さらにはテストの点数で子どもたちや学校を競わせて、その結果のみで優劣をつけ、差別化するなど、国が、子どもたちを自分たちの思う方向へ誘導する、まるで、戦前の教育への回帰を図っているのではないかと思えてなりません。

今回の地教行法の改正は、60年に一度の大改正であり、憲法で保障された教育権を、そして日本の次代を担う子どもたちの豊かな学びの権利を、地域社会全体で支え、強化していくための改正でなければなりません。そのためには、責任体制を明確化しつつも、教育の政治からの中立性と地域の独自性を確保し、子供たちに最も近い学校現場の教育体制を強化していくことこそ、私たちが実現しなければならないことだと信じます。

これから始まる参議院での審議を通じて、より望ましい方向に地方教育行政を進めていくことができるよう与野党あげて取り組んでいくことを要請し、私の質問を終わります。

 (了)